球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

不正投球を助長する新異物「スパイダータック」

[ 2021年6月13日 05:30 ]

 ボールに傷を付けたり、指に異物を付けて投げる投球は不正投球として「公認・野球規則」は禁じている。だが、不正投球は減らないどころか、近年は「現役投手の70~80%が使用している」(OB投手)新異物まで登場した。「スパイダータック=ネバネバしたクモの糸」と呼ばれる滑り止めクリーム状の物質で、れっきとした商品なのだ。

 ファンやメディアが不正投球に注目したのは、試合のデータ公開の投球回転数からだった。スパイダータックを塗った指先でボールをしっかり握り、力いっぱい投げたならば、回転数を増した直球は走り、変化球も鋭くなる。時速160キロの速球を投げる投手が珍しくなくなったのは…。

 そんな視線が集まる投手の一人がヤンキースのエース、ゲリット・コールだ。「スパイダータックを使っているのか」との記者たちの質問にコールは答えるまでに15秒かかった。「どう答えていいか分からない。それが今の正直な気持ちだ」。うそはつきたくない、しかし、言えないというのが分かるコメントだ。ここに来て問題が表沙汰になったのは、打者たちがひそかにささやいていた“怪しい”投手の名を挙げ始めたからだ。

 実はMLBは3月のキャンプで今季の不正投球の摘発強化を審判員に指示し、全球団に「警告」した。怪しい投球のボールは球審が保管し、怪しい異物が付いた帽子、手袋などが先週のオーナー会議で示され、罰則強化が承認され近く発表、今月末から施行という。

 ところで、「スパイダータック」は何のために開発されたのか。人気競技の力比べ、数百キロの大石を持ち運ぶ競技の滑り止めだ。車いす競技で車輪を回すにも欠かせない。野球での使用はとんだスピンオフなのだ。(野次馬)

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