球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

ファンは怒り、オーナーは辞任を考える…冷徹非情「ブロックバスター・トレード」

[ 2021年2月7日 05:30 ]

 球界用語「ブロックバスター・トレード」は、「ブロック(街1区画)をバスター(吹き飛ばす)する大トレード」をいう。カージナルスとロッキーズの間でこの爆弾トレードがさく裂だ。カ軍はゴールドグラブ賞8年連続、本塁打王3回、打点王2度の大リーグ最高の三塁手ノーラン・アレナドを若手無名選手5人との交換で獲得した。

 「今季は勝つ」と狂喜するカ軍ファン。一方、アレナド中心のチームをつくりプレーオフを狙ったロ軍だが、直近5シーズンで勝ち越しは2度。19年に結んだアレナドの契約延長8年、総額2億6000万ドル(約273億円)がコロナ禍無観客試合後の経営を直撃した。アレナドの来季には「オプトアウト=契約離脱権」がある。ロ軍は何も得ることなく生え抜きのスーパースターを失う。追い詰められての放出だ。ロ軍の公式ツイッターにはただ一言、「トレードは完了しました」。そして泣いている絵文字だけ。

 初めて入団したチームで長く活躍するフランチャイズ選手のトレードは「近年球界の悩み」とはワシントン・ポスト紙の指摘。昨年2月、ドジャースは右翼手ムーキー・ベッツをレッドソックスからトレード獲得。その活躍で32年ぶりにワールドシリーズに勝利した。かつてのFA補強に取って代わる「経済的に苦境のチームが育てたスターを金持ち球団が強奪するに等しい補強策。手を打たねば」とはベテラン記者。

 当然ファンは怒る。「私にはファンの気持ちが理解できる。私も同じ気持ちだ」とロ軍のデック・モンフォート・オーナー。「GMを解任するか?」と担当記者。「ノー、GMは解任しない」。オーナーは続けた。「私は自分の解任を考えたよ」。勝負の現場はいつだって非情だ。 (野次馬)

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