球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

殿堂入り選手と“過去の汚点” MLBに問われる姿勢

[ 2021年5月9日 05:30 ]

 やまないセクハラが球界を悩ませる。現役なら大リーグ機構(MLB)の調査結果で処分できる。困るのは殿堂入りの超エリート選手の過去の事件が掘り返された時だ。

 11年殿堂入りのロベルト・アロマー氏(53)はパドレス、メッツなど7球団で通算17年プレーし、球宴12回連続出場の名二塁手。シャープな言動はときに脱線し、審判員の顔にツバをかけた事件により、引退5年で資格を得る初年の殿堂入りを逃し、翌年まで待たされた。才気を買われ、MLB顧問を務め、さらにMLBや球団の高位役員ら15人編成の殿堂特別理事にも連なった。

 MLBのセクハラ処理は「告発に誠実に対応し、秘密裏の調査」がモットー。3日に突然、「14年の性的な違法行為により」アロマー氏の顧問解雇、不適格名簿入りが発表された。続いて殿堂のトップ、ジェーン・クラーク会長がアロマー氏の辞任を「受け入れた」とコメント。妙な手続きだが、殿堂の創設はクーパーズタウンに住む富豪が村おこしのためMLBに土地提供を持ちかけ、以後その一族が会長を務める。パトロンに汚れ仕事はさせられない。辞任はMLBからの圧力だ。

 MLBは自ら作った「不適格名簿に記載された者は殿堂入りの資格なし」の規則で悩む。殿堂に掲げられた肖像額は外されない。昨年末、殿堂入り口には「殿堂は投票時の有権者(野球記者)の視点の反映です」とのプレートが掲げられた。併設の博物館では“負の歴史”となってしまった選手、関係者の関連物品、資料を常設展示する。

 アロマー氏と2度のワールドシリーズを勝ったブルージェイズは、ホーム球場のアロマー氏関係の記念物一切を取り払った。どちらが正しい姿勢かは言うまでもない。(野次馬)

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