球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

球史最多戦歴と人柄で「悪役」率いるアストロズ指揮官

[ 2021年10月17日 05:30 ]

 アストロズは大リーグの「悪役」だ。17年にドジャースを破り球団初のワールドシリーズ制覇を機に強豪球団となった。しかし、17年の王座は、チーム総動員で相手チームのサインを不正に盗む違法行為によるものだった。以来、ア軍は「チーター=詐欺師」とやじられ続けている。

 例えばホワイトソックスを3勝1敗で退けた地区シリーズ。ホ軍の若手救援投手が「連中はまだ妙なことをやっているようだ」とほのめかした。チームのまとめ役でもある遊撃手コレアは「証拠も示さず相手を侮辱する失礼な話」と言ってから続けた。「ヒール(悪役)で結構。過去の失敗を非難されることがチーム団結の動機づけになっている」。開き直りではない。それしか方法がないのだ。

 ダスティ・ベーカー監督はホ軍投手の非難への感想を求める記者にさすがの対応。「私は音楽好きでね。今朝聴いたエリック・クラプトンの“私に文句を言う前に”という曲の歌詞で答えるのがよさそうだ。“あれこれ言う前に自分自身をかえりみたら”というのだ。それが私の答えだ」。クラプトンは英国の名ギタリスト、早速ネットで聴くと男女のいさかいと和解の歌と思える。

 サイン盗みで監督を失ったア軍が3年現場を離れ引退同様だったベーカー氏にチームを託したのは就任4球団(昨季のア軍を加えると5球団)全てをプレーオフに導いた球史最多の戦歴と選手、メディアに信頼されるその人柄が決め手だった。

 昨季のコロナ対策で増やされたプレーオフ枠増加に滑り込んだのはツキだろうが、これも監督には必要条件。輝かしい戦歴に欠けているのがワールドシリーズ制覇、実現すれば老将の夢が果たせ、チームの悪評も和らぐと思うのだが…。(野次馬)

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