球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

偽物の記録達成ボール出没許さないMLBの徹底した対策

[ 2022年9月25日 02:30 ]

 ア・リーグのシーズン本塁打新記録62号を目指すヤンキースのアーロン・ジャッジと、史上4人目の通算700号本塁打を達成したカージナルスのプホルスは、ともに2人だけのためにつくられた特別仕様球を使っている。

 2人が打席に立つたびに特別仕様球に取り換えられる。球史に残る記録達成ボール。目印がないと他のボールと紛れてしまう。大リーグ機構(MLB)には試合の記念品が本物であることを検査、確認する専門部署がある。2人の記録に関わるボールには「極秘の微妙な何かでボールにマークする」というだけでMLBはそれ以上、明らかにしない。偽物の出没を避けるためだ。

 これを受けてニューヨーク・タイムズ紙が大リーグの試合記念品の真贋(しんがん)判定システムの仕組み、歴史を報じた。試合球の出自の確認、保証の大切さを最初に訴えたのは、14年にがんで死去した元パドレスのトニー・グウィン。首位打者8回の安打製造機で殿堂入りを果たしているが、自分の偽サイン入りのボールが大量に販売されているのに気が付いた。サインボールの収入は慈善事業への寄付が選手たちの通例だ。

 「選手だけでなく球団もMLB機構も正しい管理を」とのグウィンの呼びかけで球界は目を覚ました。いまでは虹色にキラキラ光る爪ほどのホログラムステッカーが本物の証明。技術の進歩で偽物づくりはまず不可能という。

 報道を下敷きに書いてきたが、白状すればグウィンが偽サインを問題にしたとき「スーパースターが多少の偽サインにケチなことを」と思ったのだから、不明を恥じるばかり…。特別球は全面的に信用する。(野次馬)

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