球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

“粘着物質チェック”投手への考慮なしで募る不満

[ 2021年6月27日 02:30 ]

 大リーグ機構(MLB)による投手の粘着物質不正使用取り締まりのチェックが21日から始まった。事前予告の検査だから違反者が出るはずもなく、2日目も無事に済んだ。

 ロブ・マンフレッド・コミッショナーは早々と「我々は正しい方向に試合を動かした」と自賛した。「自然に生まれた球団同士、不正投球の告発なし」の暗黙の了承。18年に公認球製造のローリングス社を買収し「ボールの細工を続けてきたMLB」(有力スポーツ誌)はその後ろめたさからか警告せず。「赤信号、皆で渡れば怖くない」の状態が続き、投打の均衡が壊れる危機に直面し、禁止ルール厳格化だ。

 騒動は検査開始前に起こった。レイズのエース右腕グラスノーは、15日の試合に愛用の「異物」を使わず登板した。今後の試合に備えたテストは、右肘に過剰な力が加わりじん帯断裂で長期離脱。「試合途中でルールを変えたMLBの非常識でこうなった」という自損事故だ。

 検査第1号は、メッツのエース右腕デグロム。1回を投げベンチに戻る途中で2人の審判員に止められた。「何が必要?」。「グラブ、帽子、ベルト、それと指先」と審判員。先発投手は複数回、救援投手は1回の検査。これが登板のたびに続く。不満顔の投手の中、エンゼルスの大谷だけが笑顔だった。2日目のナショナルズのエース右腕シャーザーの検査は、対戦相手フィリーズのジョー・ジラルディ監督が検査要求を出し、不満顔のシャーザーは「“マンフレッド・ルール”が混乱のもと」と怒りを爆発させた。

 ネズミ捕り検査でMLBが心配した「試合時間の長さはクリア」と喜んだが、投手のストレスには考慮なし。同コミッショナーは「規則の呼び名は個人の自由、シャーザーは賢い若者」と上から目線。選手の怒りを買った。今季は「労使協約」改定年。労使対立は深まるばかり。(野次馬)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る