球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

乱闘処分での「分割執行」ファンサービス 大リーグはビジネスだ

[ 2022年7月3日 05:30 ]

 1週間前の日曜日(日本時間は月曜日の6月27日)、大谷翔平のエンゼルス対マリナーズ戦で乱闘騒ぎが起こった。大谷さえいれば、十分楽しめる日本のファンには、ユニホーム組と職員を合わせ12人の退場者が出て、大リーグ機構(MLB)からそれぞれに出場停止処分が科された…で事は終わりのはず。だが、この大量出場停止処分はMLBにも面倒事だ。

 処分はエ軍9人で手薄な戦力が貧血状態に、マ軍の3人は全員レギュラー。マイナーからの補充は許されず、大リーグ枠40人内でやりくりだから、両軍ともに大幅戦力ダウンだ。それで試合はファンに失礼では…。

 実は、それを回避する“仕掛け”がある。知ったのは87年にオーナーたちの「FAとの契約拒否談合」で締め出されヤクルトに入団したボブ・ホーナーのおかげだ。ヤクルトで1年の大活躍で大リーグにカムバックしたが故障者リスト入り、記者席で試合を見ていると乱闘が起こり、ホーナーはユニホームに着替えて参加し、出場停止のニュースが米軍新聞「星条旗紙」に載った。「興味があるだろう」とよく後楽園に来るスポーツ記者が見せてくれ「一度に多くの退場者が出た場合の出場停止処分は、分割執行で戦力ダウンを薄める営業上の方法を取る」というのだ。

 今回の処分通達文はこんな具合。「エ軍三塁手アンソニー・レンドンには故障者リスト入り(右手首手術で今季絶望)でベンチ内にとどまるべきなのに、乱闘に関わった行為に対し5試合出場停止を科す。出場停止は故障者リストからの復帰後に執行(23年になるだろう)、加えて直近7試合ベンチ入りを禁止する」。厳しい処分にも忘れぬファンサービス。大リーグはビジネスだ。(野次馬)

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