球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

さまざまな問題突破し一歩踏み出す球宴に

[ 2021年7月4日 05:30 ]

 オールスター戦は大リーグの展示会だ。1933年、球宴はシカゴの新聞社の販売促進で始まった。世界は大恐慌、開催中のシカゴ万博も閑散としていた。「少年ファンから、両リーグのスター選手対決が見たい、との投書が来た。試合は万博の盛り上げになる」と新聞社の運動部長は本音を隠し、大リーグ機構(MLB)に売り込んだ。「少年の投書」は部長の創作だが、試合は大当たり。部長は殿堂入りした。

 そんな理由で球宴は「スポンサー企画満載の壮大なオープン戦」と斬り捨てる記者たちも、昨年の休止のあと二刀流・大谷翔平と共に戻ってきた球宴に注目する。

 MLBは4月に開催地をジョージア州アトランタからコロラド州デンバーに変更した。ジョージア州の「マイノリティー(黒人や移民)の投票を排除する新選挙法」が「MLBの価値感にそぐわない」ためだ。MLBと契約を結ぶ多くのスポンサー企業も球団オーナーたちも、社会的な問題や政治的問題には距離を置くのがこれまで。「多くの顧客を前に一方を支持するのはマイナス。今は声を上げるのがトレンド、それに乗っただけ」と皮肉りながら、「今回の球宴はそれを突破し一歩を踏み出すチャンス」と多くの野球メディア。「異物使用の違反投球、収まらないセクハラ問題。企業の無神経な商業主義も続くが、否定できないのは素晴らしい才能を持った選手たちの登場だ。ア・リーグのケビン・キャッシュ監督が大谷をどう使うか考えるだけでも楽しい」と続く。

 選手の球宴への思いは特別だ。ドン・ブラッシンゲーム(ブレイザー)が南海に入団した67年、1年生野球記者で神戸の自宅で大リーグ生活12年の最高の思い出をたずねた。「56年の球宴出場。平凡な右翼フライだったが…」目の輝きが忘れられない。(野次馬)

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