仙台育英 今夏チーム1号が奇跡の満塁アーチ、病魔乗り越え岩崎「皆が支えてくれた一本」

[ 2022年8月23日 04:05 ]

第104回全国高校野球選手権第14日・決勝   仙台育英8―1下関国際 ( 2022年8月22日    甲子園 )

<仙台育英・下関国際>7回、満塁弾を放った仙台育英・岩崎(撮影・岸 良祐)
Photo By スポニチ

 野球の神様は仙台育英の苦労人にほほ笑んだ。5番・岩崎生弥(いくや=3年)の引っ張った打球が舞い上がる。甲子園に吹く浜風にも乗った。

 「行け!」。願いは伝わり、左翼席前列に着弾。満塁弾で東北勢初の優勝を引き寄せ「打った瞬間は入ると思わなかった。観客の方々から拍手を頂いて、打ったんだなと感じた」と振り返った。

 3―1の7回に1点を追加し、なおも1死満塁。伝令で「スクイズはない」と告げられ、気合を入れた。「とにかく自分のスイングをする」。カウント3―1からの5球目。見逃せば押し出し四球になる肩の高さの140キロ直球を強振した。

 今大会どころか宮城大会を通じてもチーム初の本塁打が、宮城県勢として春夏通じて初の満塁弾。決勝では08年の大阪桐蔭・奥村翔馬以来14年ぶりだ。何度もガッツポーズを繰り返し、一塁側ベンチ前で須江監督と抱擁。「甲子園という舞台で恩返しができてうれしかった」と感無量だ。

 全5試合に出場し、打率・357、10打点をマークした背番号14。逆境を乗り越えてたどり着いた甲子園だった。昨年6月、運動に伴い発作が誘発される気管支ぜんそくの一種「運動誘発ぜんそく」と診断され、さらに胃の一部が横隔膜から突出する「食道裂孔ヘルニア」と「逆流性食道炎」を次々に発症。本格的に練習に復帰したのは今年6月。宮城大会はベンチ外だったが、仲間から「絶対甲子園に連れていくから諦めずに練習しろよ!」と励まされ、甲子園でベンチ入りを果たした。

 「皆が支えてくれなかったら、ここでの一本は出なかった」。甲子園での最後の打席。感謝の気持ちをバットに込め、最高のスイングで悲願の初優勝に導いた。(柳内 遼平)

 《宮城勢初》仙台育英の岩崎が7回に満塁本塁打。決勝戦での満塁本塁打は94年西原正勝(佐賀商)、07年副島浩史(佐賀北)、08年の奥村翔馬(大阪桐蔭)に次ぎ14年ぶり4本目となった。なお、夏の満塁本塁打は今大会の海星戦での山田陽翔(近江)に次ぎ通算54本目。宮城勢では初めてだ。

続きを表示

2022年8月23日のニュース