中畑氏「むなしさ」感じさせない球数制限方法を

[ 2019年8月20日 08:42 ]

11回、投げたあとに右足を気にする星稜・奥川 (撮影・奥 調)
Photo By スポニチ

 【キヨシスタイル】泣けたよ。今大会初のタイブレークに持ち込まれた17日の3回戦、星稜―智弁和歌山戦。これぞ甲子園、聖地という見本のような試合だった。

 1―1で延長戦に突入し、星稜のエース、奥川恭伸君に異変が起きた。右ふくらはぎがつったんだ。代えてあげた方がいいと思ったけど、林和成監督は微動だにしない。チームメートは不安そうにしてたけど、奥川君本人も「俺が投げるんだ」という姿勢でマウンドに向かった。

 ふくらはぎに負担がかからないようフォームを工夫しながら投げ抜き、14回165球を投げて3安打1失点。サヨナラ3ランによる勝利を呼び込み、校歌を聴きながら号泣していた。

 その姿を見ただけでもらい泣きしたのに、涙腺をもっと崩壊させてくれるエピソードを後で知った。智弁和歌山の黒川主将が熱中症予防に効く漢方薬をくれたというんだ。試合中にだよ。

 互いにいい状態で戦いたい。対戦相手に対する敬意。相手の立場に立って物事を考えるキャッチボールの精神。甲子園という舞台が人を成長させる。高校野球の原点を見た思いがする。

 星稜は翌18日の準々決勝、仙台育英戦では奥川君を温存し、17―1の大勝を飾った。途中、林監督の指示で伝令に走った奥川君はマウンドで「俺は今日投げたくないぞ」と言ってチームメートを笑わせたという。いいチームだよね。

 私の中で引きずっていることがある。岩手大会決勝で佐々木朗希君を温存して敗れた大船渡のことだ。東日本大震災を乗り越え、地元の公立校から甲子園を目指そうと誓った佐々木君とチームメート、彼らを応援していた地元の人たちはどんな思いで、この夏を過ごしているのだろうか。

 スポーツは野球に限らず、どんな競技でも限界を超えて見えてくる領域がある。故障は防がなきゃいけないけど、もっと大事なのは、みんなのやり切った感。それは本人の自覚、監督、チームメートとの信頼関係の中から生まれるものなんだろうと思う。

 今、球数制限導入の動きが加速している。私は反対だけど、どうしても導入するなら選手に「むなしさ」を感じさせない制度にしてもらいたい。(スポニチ本紙評論家・中畑 清)

続きを表示

「大谷翔平」特集記事

「始球式」特集記事

2019年8月20日のニュース