阿部一二三「歴史に名を刻めた」 詩「ずっと思い続ければ実現するんだな」 きょうだい同日金メダル

[ 2021年7月26日 05:30 ]

東京五輪第3日 柔道女子52キロ級決勝、男子66キロ級決勝 ( 2021年7月25日    日本武道館 )

兄妹で金メダルをかじる阿部一二三と詩(撮影・北條 貴史)
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 ともに歩んできた。2人ならば苦しみは半分になって、喜びは2倍になった――。

 男子66キロ級は阿部一二三(23=パーク24)が制し、女子52キロ級では詩(うた、21=日体大)が、日本勢初の金メダルを獲得。阿部兄妹は夏季五輪の日本勢初となる、きょうだい同日金メダルの歴史的快挙を達成した。個人種目でのきょうだい同日金は、冬季五輪を含めても日本勢初だ。

 体が小さく、6歳で柔道を始めてからも勝てなかった一二三。小学生時代に女の子に負けたことをきっかけに、消防士として肉体を鍛える父・浩二さんとトレーニングを開始した。約束したのは「毎日続けること」。体の成長を止めないために筋力強化を是とせず、ランニングや浩二さんが消防士仲間と考案したメディシンボールを使ったメニューなどで、類いまれな体幹を築いた。だから座右の銘は「努力は天才を超える」。流した汗と涙の分だけ強くなってきた。

 一二三の稽古に付いていき、道場で遊ぶことが大好きだった詩は、その延長で5歳で柔道を始めた。ただ父と兄のトレーニングは「きつそうで、やりたいと思ったことはない。たまに付いていってはジュースを飲んで見ているだけ」。それでも幼少期から「カードゲームで負けてけんかになる。しすぎて(回数は)分からないくらい」というほどの負けず嫌い。中学生になって結果を出し始めた兄に感化され、真剣に練習に励むようになった。

 高2で講道館杯を制し、一二三はリオ五輪の代表候補に浮上。全国にその名が知れ渡ってからしばらくは、兄の背中を妹が追う構図だった。17年のGS東京大会で初の兄妹同時優勝を果たし、18年の世界選手権でも快挙を達成。同じ目線で刺激し合える存在になったが、19年の世界選手権は妹だけが優勝し、その後も先に五輪代表を決めた。それでも「いつでも前を走ってくれて、ずっと引っ張ってくれた存在」と感謝したのは、試合結果だけではなく陰の努力をずっと見てきたからだ。

 コロナ禍で畳の上での稽古ができなくなった昨春は、2人でランニングやトレーニングする機会が劇的に増えていった。本格的に稽古が再開してからも、以前よりも一緒に稽古をする機会が増えたという。言葉数は少なくても、互いの存在を意識するだけで支えになり、刺激になった。12月に開催された丸山城志郎とのワンマッチでの五輪代表決定戦。24分間に及ぶ歴史的な一戦を制した経験は、悲願の舞台でも冷静に戦い抜く力を養った。「道のりは険しかった。ただ、一つの無駄もなかった。それがメダルに詰まっている」。約526グラムの金メダルを手に、一二三はしみじみとかみしめた。

 史上初の無観客開催。多くの選手にとって、本来ならいるはずの家族はスタンドにいない。でも、一二三と詩だけは違った。かけがえのない兄妹であり、戦友であり、ライバルが、同じ空間にいた。「本当に歴史に名を刻めた。歴史を塗り替えられたと思う」と一二三。「小さい頃から2人の夢だった。ずっと思い続ければ実現するんだなと思った」と詩。7月25日は阿部家にとって、新たな記念日になった。

 ≪団体ではスピードスケートの高木姉妹が平昌で金≫日本の五輪「きょうだい金メダル」は、冬季大会では18年平昌大会スピードスケート団体追い抜きの高木菜那・美帆姉妹がいるが、夏季大会、また個人競技では阿部兄妹が史上初めてとなった。個人競技の「きょうだい同日メダル」は、68年メキシコ大会重量挙げフェザー級で三宅義信が金、弟の義行が銅。04年アテネ大会レスリング63キロ級で伊調馨が金、48キロ級で姉の千春が銀を獲得した例がある。

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