「一二三の方が天才、詩の方が努力家」2人を直接指導した日体大の山本洋祐部長が証言

[ 2021年7月26日 05:30 ]

東京五輪第3日 柔道女子52キロ級決勝、男子66キロ級決勝 ( 2021年7月25日    日本武道館 )

金メダルを手に笑顔を見せる阿部一二三(左)と詩(撮影・会津 智海)
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 阿部兄妹を直接指導し、現役時代は88年ソウル五輪で銅メダル(65キロ級)、日本代表コーチとして野村忠宏氏らの金メダル獲得をサポートした日体大柔道部の山本洋祐部長(61)は証言する。

 「一二三の方が天才だと思う。詩の方が努力家。一二三の投げの感覚は、本当に抜きんでている」。地元・兵庫で2人を見てきた指導者の多くは「兄は努力家、妹は天才肌」と評するが、山本氏の見立ては真逆だった。

 16年4月の入学当時、一二三の担ぎ技は世界屈指。背負い投げの際、釣り手側の右脇を締めるのがセオリーだが、脇が開いた状態でもフルパワーを発揮できる、類いまれな肩周りの柔軟性がある。そのため「肩周りの筋肉はあまり付けないように。柔軟性は残した」と、日体大准教授で男子日本代表コーチでもある岡田隆氏(41)と密に連携を取り、体づくりも進めた。

 詩は誰よりも真面目。「スロースターターの兄に比べて、詩は最初から最後まで全力」。不安を打ち消そうと、試合日のウオーミングアップも1本目から全力で「おまえほど稽古をしている選手はいない。今まで指導してきた中で、内容も質も全て一番。だから自信を持て」と褒めながら育ててきたという。

 2人のために大学のサポートを引き出し、詩はキャンパス近くで母・愛さんと2人暮らし。一二三も母の手料理で英気を養える環境も整えた。言い続けた言葉は「ケガには気をつけろ」。少しの痛みでパフォーマンスが落ちる一二三、大学入学後には肩や足のケガが相次いだ詩。力があるからこそ、100%の状態で畳に上げることに腐心し、日本武道館の畳に送り届けた。

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