スケートボードの本場・米国に認められた堀米雄斗 コーチが語る「大谷翔平レベルの認知度」までの成長

[ 2021年7月26日 05:30 ]

東京五輪3日目 スケートボード男子ストリート ( 2021年7月25日    有明アーバンスポーツパーク )

決勝戦の演技を終え、ライバルに祝福され抱き合い喜ぶ堀米(撮影・会津 智海)
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 新競技のスケートボードは最初の種目となる男子ストリートが行われ、世界ランキング2位の堀米雄斗(22=XFLAG)が37・18点で初代王者となった。

 45秒間のラン2回をミスして迎えたベストトリックで、堀米が真価を発揮した。9点台を連発し、最終5回目の技を決めて勝利を確信すると、普段は感情を出さない22歳は両手を叩いて日本代表の早川大輔コーチ(47)の元に駆けだした。「ミスできない状況で、集中して今までやってきたことを信じて挑めた。シンプルだけど、すごくうれしい。今までの大会と違って一番、心に残る」。本場・米国で腕を磨いて生まれ育った江東区に戻り、初代王者として誇らしげに日の丸をはためかせた。

 堀米を抱きとめた早川コーチは、幼少期の堀米のことを問われると「いや、止まらない。ずーっと出てきちゃって。昔のことを思い出すと涙が出ちゃう」と声を詰まらせた。友人の堀米亮太さん(46)が「息子の雄斗です」と連れてきて出会ったのが、堀米が中学校に上がる前のことだった。早川コーチがどうなりたいか聞くと、少年は「アメリカでプロになりたい」と即答した。

 堀米の滑りを見て、一瞬でその才能にほれ込んだ。「滑りを見たら本当にアメリカに行けると実感した。それまでは自分のプロ活動を頑張らないとって思っていたけど、そんなのはどうでも良くなった。完璧に裏方で支えたい、僕が持っている知識を全部雄斗のために使いたいと思った」。日本のトップのやり方を受け継いできた自身の世代とは異なり、インターネットの普及で本場・米国のトップを目指して育った「完全な新世代」の出現。早川コーチは迷いなくサポートにまわった。

 国際大会の付き添いや中学のスケートボード留学、高校卒業後の渡米を資金集めも含めて支えた。中学1年で初めて米国の大会に乗り込んで予選落ちに終わった少年は、気付けば最高峰の大会・ストリートリーグ(SLS)を制するまで成長し、トッププロの仲間入りを果たした。米国で活動していた早川コーチは、その難しさを身を持って知っている。「いきなりルーキーが行って稼げるかと言ったら稼げない」。言葉の壁にぶつかり、芽が出ない苦しい時間を乗り越え、「大谷翔平さんのレベルか、それ以上の認知度がある稼げるプロスポーツ選手」にまで上り詰めた。

 トリックや技術を語れば尽きることはない堀米の強さと才能を、早川コーチはひと言で「誰よりもスケートボードを好きになったこと」と語る。まだ完全には認められていない日本のスケートシーンに変化をもたらすべく、全てを背負って戦った教え子。「雄斗の影響で間違いなく良い方向に向かう」。金メダルの成果として、その言葉が結実する日は近い。

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2021年7月26日のニュース