【柔道】攻撃バリエーション多彩な一二三 寝技進化しオールラウンダーの詩―上水研一朗の目

[ 2021年7月26日 05:30 ]

東京五輪第3日 柔道女子52キロ級決勝、男子66キロ級決勝 ( 2021年7月25日    日本武道館 )

決勝で鬼の形相で攻め込む阿部一二三(撮影・北條 貴史)
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 兄妹そろって世界中からマークされる中で進化を見せつけての頂点、本当に素晴らしいと思う。

 一二三の磨かれた部分は攻撃のバリエーションだ。従来、強い体幹を生かした背負い投げや袖釣り込み腰など、相手を前に引き出す「前技」の豪快さが特長だった。しかし、海外選手に研究され、さらに国内に強力なライバルが生まれたことでバージョンアップしてきた。それが前技を警戒した相手の動きを利用して、後ろに倒す「後ろ技」だ。決勝、前技の袖釣り込み腰をダミーとし、相手が後ろに体重を残したところで後ろ技の大外刈りで仕留めた。

 詩の進化はなんといっても寝技だ。以前、国内でライバル選手に2度ほど十字固めで敗れているが、この経験が寝技の重要性を認識させたと思われる。決勝は楽に勝ち上がってきた相手を何度も寝技で攻め、体力を削って、最後は仕留めた。詩も豪快な投げ技が特長だったが、寝技を加え、オールラウンドの柔道家に成長した。

 ともにまだ若い。今後も世界中から研究されることになるだろうが、武器を増やしていくことで3年後の五輪の連覇は十分可能だと思う。(東海大体育学部武道学科教授、男子柔道部監督)

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