阿部一二三&詩、日本初きょうだい同日金メダル!「喜び超えた喜び」妹優勝の33分後に兄「凄く燃えた」

[ 2021年7月26日 05:30 ]

東京五輪3日目 柔道女子52キロ級決勝、男子66キロ級決勝 ( 2021年7月25日    日本武道館 )

兄妹で金メダルをかじる阿部一二三と詩(撮影・北條 貴史)
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 ともに歩んできた。2人ならば苦しみは半分になって、喜びは2倍になった――。

 男子66キロ級は阿部一二三(23=パーク24)が制し、女子52キロ級では詩(うた、21=日体大)が、日本勢初の金メダルを獲得。阿部兄妹は夏季五輪の日本勢初となる、きょうだい同日金メダルの歴史的快挙を達成した。個人種目でのきょうだい同日金は、冬季五輪を含めても日本勢初だ。

 一足先に世界の頂点を極めた瞬間、詩は寝技を解いてあおむけになり、日本武道館の天井に向かって何度も両腕を突き上げた。立ち上がる前に、今度は畳をこぶしで叩く。

 「初めての感覚。自分でもああなると思わなかった。喜びを超えた喜びを体感した」。

 理性を失うほどの喜びようを、審判から注意されるほどだった。

 ウオームアップエリアで妹の金メダルを見届けた一二三は、「決勝で妹が先に金メダルを獲って、凄く燃えた。絶対にやってやるぞと。プレッシャーは全く感じなかった。闘志しか湧いてこなかった」。

 決勝は前半に技ありを奪い、最後は逃げ切った。詩の歓喜から33分。控えめな笑みを浮かべ、畳を下りる手前で深々と座礼。「顔を上げ、胸を張って畳を下りたいと思った」と、妹とは対照的に歴史的な瞬間を迎えた。

 五輪を1年延期に追い込んだウイルスは、歴史的快挙を達成した兄妹を引き合わせることすら拒んだ。金メダリストになった2人がやっと対面できたのは、表彰式前の数分。兄が歩み寄って抱擁を交わし、「ありがとう」「おめでとう」と短い言葉だけ交わし合った。詩が会見を終えた後、ようやく2人で記念撮影。じわじわと湧き上がる達成感が、兄妹の体にほとばしった。

 3度あった過去の兄妹同日優勝と同じように、先に決勝の畳に上がった詩の相手はブシャール。19年11月のグランドスラム(GS)大阪大会で、国際大会での対外国人相手の連勝を48で止められた難敵。その時も勝負を決めるポイントを奪われた肩車を何度も仕掛けられた。しかし徹底的に組手を制して延長戦に持ち込み、相手が息を弾ませ始めた同3分すぎ、崩れたところを即座に寝技に持ち込み一本。「しっかり対策し相手を見て冷静に戦えた」と胸を張った。

 2度の世界王者になった後、一時期は勝てなくなった一二三は、現状打破のために磨いた足技が夢舞台でもさえ渡った。初戦の2回戦、準々決勝と、担ぎ技を警戒して後ろに重心をかける相手を後方に倒す大外刈りでポイント。準決勝は豪快に背負い投げで一本を奪った後、決勝も前半2試合と同じパターンで技あり。「冷静に前に出ながらワンチャンスをものにする柔道ができた。心技体、全てレベルアップして、今日は全て見せられた」とやはり胸を張った。

 ≪団体ではスピードスケートの高木姉妹が平昌で金≫日本の五輪「きょうだい金メダル」は、冬季大会では18年平昌大会スピードスケート団体追い抜きの高木菜那・美帆姉妹がいるが、夏季大会、また個人競技では阿部兄妹が史上初めてとなった。個人競技の「きょうだい同日メダル」は、68年メキシコ大会重量挙げフェザー級で三宅義信が金、弟の義行が銅。04年アテネ大会レスリング63キロ級で伊調馨が金、48キロ級で姉の千春が銀を獲得した例がある。

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