女優・野村昭子さん死去、95歳 「家政婦は見た!」「渡鬼」などで名脇役として活躍

[ 2022年7月2日 19:36 ]

野村昭子さん
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 黒澤明監督の「赤ひげ」や「家政婦は見た!」(テレビ朝日)、「渡る世間は鬼ばかり」(TBS)など数多くの映画、ドラマで活躍した女優の野村昭子(のむら・あきこ、本名増見昭子=ますみ・あきこ)さんが亡くなっていたことが2日、分かった。95歳。東京都生まれ。庶民的な味わいでお茶の間に愛された名脇役だった。

 関係者によると、野村さんは1週間前には元気に歩いている姿が目撃されていたが、近隣住民が「最近、野村さんの姿を見ていない」と通報。自宅寝室で倒れているところを発見された。事件性はないという。死因は不明。野村さんは一人暮らしだった。

 生涯現役を貫いた野村さんが静かに旅立った。「家政婦は見た!」で共演した市原悦子さんが19年1月に82歳で亡くなった際には「時代を作った人。本当に惜しい。普段は明るく優しい人で、あの人の芝居を尊敬していたし、天才だと思っていた」と追悼のコメントを出したが、今ごろは天国で再会しているに違いない。

 桜蔭高等女学校(現・桜蔭中学、高等学校)から東京薬学専門学校(現・東京薬科大学)に進み、薬剤師の免許を持つ異色の女優でもあった。東大医学部付属病院に勤務していたが、東大劇研の芝居を手伝ったのが縁で演劇に魅了され、1949年11月に俳優座養成所に第1期生として入所。同期に阿部寿美子(91)や岩崎加根子(89)らがいる。

 52年に卒業してそのまま俳優座に入団。木下順二作の「赤い陣羽織」で初舞台を踏んだ。「桜の園」や「東海道四谷怪談」などでキャリアを重ねる一方で、「ほらふき丹次」(54年)から映画にも出演。黒澤監督の「赤ひげ」(65年)では小石川養生所の下働きのおふくを生き生きと演じて印象を残した。その後も「砂の器」(74年)「衝動殺人 息子よ」(79年)「死の棘」(90年)「無能の人」(91年)などで存在感を示した。

 NHK「おはなはん」(66年)からドラマにも数多く出演。「家政婦は見た!」シリーズでは市原さんが所属する大沢家政婦紹介所の所長役。“渡鬼”では山岡久乃さんが演じた「岡倉節子」の親友「青山タキ」を、「税務調査官・窓際太郎の事件簿」(TBS)では小林稔侍(81)扮する太郎の母親役を長く演じ、作品に欠かせない存在だった。

 56年、俳優座演出家で1歳年下の増見利清氏と結婚したが、01年に死別。寂しさを紛らわすために犬を飼い、渡鬼での役名「タキ」と名付けてかわいがったが、その愛犬とも死別している。

 渡鬼で共演した泉ピン子(74)から「野村ママ」と呼ばれて慕われるなど、芸能界の後輩たちから愛された。「きんぴら行進曲 野村昭子の味指南」などの著書がある。11年5月10日、橋田賞特別賞を受賞。常磐津が特技だった。

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