藤井王将 8冠へ追い風!地元・名古屋に対局場オープン 自宅から通勤可能に

[ 2022年6月22日 05:00 ]

名古屋将棋対局場
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 JR名古屋駅前の高層ビル・ミッドランドスクエア25階に新設された名古屋将棋対局場が21日、報道陣にお披露目された。藤井聡太王将(19)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=が22日、初登場する第81期名人戦A級順位戦(毎日新聞社、朝日新聞社主催)の佐藤康光九段戦でこけら落としとなる。藤井の師匠の師匠、故板谷進九段は「東海にタイトルを、将棋会館を」と夢見た。一昨年のタイトル獲得に続く大師匠の夢の実現へ前進した。

 対局場は地上約120メートルにあり、JR名古屋駅だけでなく名古屋城も望める。100畳以上ある会議室に畳85枚を敷き、最大7局まで同時開催可能。同ビルに入るトヨタ自動車から提供を受けた畳、そして屏風(びょうぶ)は「金色に比べて気持ちが落ち着く」(連盟担当者)との理由から銀色になった。

 東京、大阪に続く常設対局場を目にして、立役者はどんな感慨を抱くだろう。11日、名古屋市内での叡王戦の防衛祝賀会で「開設していただき、非常にうれしい。楽しみにしている」と語った藤井。米ニューヨークの旧ヤンキースタジアムが「ルースが建てた家」なら、藤井が建てた対局場だろうか。

 小学生時代の藤井を教えた、名古屋市の「栄将棋教室」を運営する指導棋士の中山則男六段(62)は「(藤井の)負担軽減が目的。対局場を第一歩に、会館建設へつながれば」と亡き師匠の悲願を語った。中山六段も奨励会三段まで進んだ、板谷の弟子。トヨタからのオファーを受け、昨年11月、連盟会長の佐藤と視察した。

 「何より藤井さんが楽。(愛知県瀬戸市の自宅から)タクシーで来てタクシーで帰ることもできる」。19歳とはいえ、竜王を獲得した昨年11月以来、全棋士の序列1位に就く。ところがタイトル戦以外の対局では、所属する大阪、もしくは東京へ自ら移動して臨む逆転現象が続いた。その負担軽減を突破口に、可能性を探るのが会館建設だった。

 板谷は「東海にタイトルを、将棋会館を」と訴え生涯名古屋から拠点を移さなかった。研究相手に事欠き、最新棋譜の入手にも時差が生じる情報格差の中、10人総当たりで名人挑戦権を争うA級に7期在籍したが、タイトルには届かなかった。62歳年下の孫弟子が、2つ目の夢まで推し進める。

 こけら落としの一局。過去1勝0敗の佐藤との対局は、19年の本社主催・大阪王将杯王将戦2次予選。両者浮き飛車から技を掛け合い、藤井が141手で制した。16歳最後の1日だった高校生が「終盤は負けかと思った」と告白した熱戦。その再現がなるだろうか。

 ≪勝負めしは弁当≫ ひつまぶしや、みそ煮込みうどんなど、勝負めしは名古屋名物かと注目を集めるが、当面は同ビルを通じて発注する弁当になる。連盟担当者によれば、順位戦は持ち時間6時間の長丁場のため昼夜2回、いずれも3種類ずつのメニューを用意。内容は和食、中華などだとし「(藤井が苦手な)キノコ抜きにも対応できると思う」という。今後、東西会館同様に出前の可能性を探るが、地元店からの立候補はまだないという。

 ≪ふるさと納税で対局体験型企画≫ 兵庫県加古川市は21日、本年度のふるさと納税の返礼品として、市ゆかりのプロ棋士と将棋の対局ができる体験型企画を発表した。100万円以上の寄付をした先着4人が対象で、11月12日に開催予定。日本将棋連盟公式戦の加古川青流戦の会場である同市の国宝「鶴林寺」で、久保利明九段や稲葉陽八段と駒を指し合える。鶴林寺で21日に開かれた記者会見で、王将、棋王のタイトルも獲得した同市出身の久保九段は「将棋を全国に広める良い機会。将棋を指して、加古川の街も楽しんでもらえたら」と語った。

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