NHKの過去ドラマ再放送の舞台裏

[ 2022年6月9日 08:20 ]

過去のドラマの再放送について説明したNHKメディア戦略本部の下要氏(中央)、メディア編成センターの土屋勝裕氏(右)ら
Photo By スポニチ

 【牧 元一の孤人焦点】NHKが総合テレビで、1980年のドラマ「ザ・商社」(全4話)を再放送している。

 松本清張さんの小説「空の城」を原作とする物語で、山崎努、夏目雅子さんらが出演。NHKメディア総局メディア編成センターの土屋勝裕ドラマジャンルマネージャーは再放送の理由について「今年は松本清張さんの没後30年に当たり、4月に『けものみち』(82年)、5月に『天城越え』(78年)を再放送しました。その第3弾として、今月は『ザ・商社』です」と説明する。

 個人的な興味から「けものみち」を実際に視聴していたが、40年前に作られたドラマの懐かしい雰囲気、和田勉さんの演出の才気、名取裕子の艶やかな魅力などを堪能することができた。

 NHKは時に、過去のドラマを再放送して注目されている。例えば、昨年7月に実施した「深夜のイッキ見!まつり」での「六番目の小夜子」。2000年のドラマで、鈴木杏、栗山千明、山田孝之、勝地涼、松本まりか、山崎育三郎が中学生役で出演。それぞれがその後、役者として成長して活躍しているだけに、お宝映像的な要素があった。

 NHKはどのようにして、再放送するドラマを選ぶのか。メディア戦略本部の下要ドラマジャンル編集長は「番組を編成する部署には、さまざまな世代の人がいます。自分が子供の頃に見ていて面白かったドラマは何か?と話し合う中で候補が挙がることが結構多く、それらの作品が今の時代にマッチしているかどうか、チェックしてゆきます」と話す。

 NHKの公式サイトには、過去に放送したドラマが年代別に並んでおり、再放送する作品を検討する際に役立っているという。

 再放送したいドラマを選んでも、すぐに実現するわけではない。今は同時配信の時代で、総合テレビで放送する番組はNHKプラスで配信することになるからだ。

 土屋氏は「現在はドラマの制作段階から、配信することで権利者と合意していますが、昔は配信自体がありませんでした。だから、再放送するためには、NHKプラスで配信する許可を権利者一人一人からいただく必要があります。NHKには再放送するためのチームがあって、3、4カ月前から、その作業を進めます」と明かす。

 配信とは別の話だが、再放送したいと考えても、出演者などの中に問題を抱える人がいて断念するケースもあるようだ。

 再放送決定後、苦労するのは、宣伝方法。NHKにドラマの本編は保存されていても、PR映像は残っていないという。

 土屋氏は「制作の人たちは現在のドラマで手いっぱいなので、私自身がそのたびに作ったりします。再放送を楽しんでもらえるように続けてゆきます」と話す。

 NHKの編成担当者たちの熱量が伝わって来る気がした。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

続きを表示

2022年6月9日のニュース