球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

どっちがア制覇しても株上がる「陰の演出家」

[ 2016年10月16日 05:30 ]

 ア・リーグのリーグ優勝決定シリーズに「陰の演出家がいた」という。多くのメディアがその人物に焦点を当てた。マーク・シャパイロ氏(49)。ブルージェイズの球団社長兼最高経営責任者(CEO)だ。シャパイロ氏は昨年までインディアンスに24年間在籍し、育成部員から球団社長にまで上り詰めた。9年ぶりの優勝決定シリーズ登場のイ軍はシャパイロ氏がつくったチームだ。一方、2年連続シリーズ進出のブ軍でシャパイロ新社長がやったのは、ブルペン強化。「強打のチームだから投手陣を整備したが、皆で話し合ってのこと。合議が私のやり方」とシャパイロ社長。「イ軍の中部地区優勝はうれしかったが、この対戦は複雑な気持ち」と笑っているそうだ。

 シャパイロ氏のブ軍への移籍経緯は異常だった。昨年8月、「ブ軍の来季の球団社長はマーク・シャパイロ」と報道があり、9月末になると「ブ軍CEOは引退、GMは今季限りで新GMはシャパイロが連れてくる」との続報。シーズン中に球団社長の引き抜きが公然と語られた。オフには報道通りの人事が実現したから、ネタ元はブ軍のリークだろう。イ軍はこの“引き抜き路線づくり”の動きに何も言わなかった。ニューヨーク・タイムズが解説する。「イ軍は“球団幹部養成学校”だ。どの球団にもイ軍卒業生がいる。引き抜きに慣れっこ」。現役GMが4球団、幹部職は6球団に広がり、大リーグ機構幹部にも卒業生がいる。小さな本拠地クリーブランドでの限られた収入の中のやりくりが優れたフロント幹部を育てた、というのだ。

 2年前の新コミッショナー選びのオーナー会議で7球団がシャパイロ氏を推薦したという。イ軍、ブ軍、どちらが勝ってもシャパイロ株は上がる。それも当然の経歴ということだ。 (野次馬)

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