球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

FA選手に待っていた悪夢…ドラフト指名権譲渡の弊害

[ 2019年6月16日 05:30 ]

 FA市場の目玉投手だった抑えのクレイグ・キンブレル(31)が6日にカブスと、先発のダラス・カイケル(31)が7日にブレーブスと相次いで契約し、長かったオフシーズンが終わった。2人がマウンドに上がるのはレギュラーシーズン半ば…。「家族もピリピリしていた。つらいオフだった」と2人は入団会見で言った。

 FAの長期協約と大金の夢は限られた少数だけ。待っていたのは“悪夢”だ。チームづくりはデータによる新人発掘競争となり、FAはサブ扱いで、30代のFAの市場価値が暴落した。獲得球団が旧所属球団にドラフト上位指名権を譲る制度は球団に敬遠された。FAを旧球団が残留させたい場合は“制限付き=クオリファイング=提示”ができる。1年契約年俸1790万ドル(約19億5100万円=この金額は年俸上位125人までの年俸平均値)が決まりだ。キンブレルはレッドソックスから、カイケルはアストロズからこの提示があった。2人が目指すのは「5年以上総額1億ドル(約109億円)超の大型契約」。「制限付き提示」の拒否は当然だった。

 キャンプが始まってもFA市場は動かない。ロブ・マンフレッド・コミッショナーは言った。「選手会も代理人も不満を言う代わりに現実を直視すべき。高望みしなければ、開幕時には球団が決まるはず」。だが、キンブレル、カイケルは決まらない。メディアは一斉に報じた。「決まるのは6月のドラフト終了後。獲得球団は来年のドラフト指名権を譲らずにすむからだ」。予想的中。ニュー・ノーマル(新常態)が始まった。(野次馬)

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