元西武・田辺徳雄氏が語る山梨野球 常連校出現で留学増加、首都圏の強豪と対戦する地理的不利はねのけた

[ 2023年4月2日 05:05 ]

第95回選抜高校野球大会最終日・決勝   山梨学院7-3報徳学園 ( 2023年4月1日    甲子園 )

田辺徳雄氏
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 山梨県富士吉田市出身の西武・田辺徳雄元監督(56=現編成プロ担当)が、山梨県勢躍進の背景を語った。田辺氏は公立の吉田で83年夏の甲子園に出場。当時から現在までの山梨の高校野球事情や、選抜出場が困難な地理的要因についても言及した。

 山梨の高校野球参加校は40校を切っていて、今は34校。県内で1強とか2強にすぐなれるが、全国に行くともっと強い高校がいる。人口の多い県は分母が多いし、有望な選手がいる。それに引っ張られて周りもうまくなっていく。山梨はその環境、土壌が弱かった。

 ここ20、30年の間に甲子園に続けて出場する常連校が出てきたことで知名度、伝統が積み重なり、「そこに進学したい」という子が増えてきた。それが山梨学院が強くなった一因だと思う。高校が少なくて4、5回勝てば甲子園に出場できるから、他県よりも「山梨の私学に入った方が甲子園が近い」と野球留学する子も増えた。

 私は公立の吉田で83年の夏の甲子園に出場した。当時の県内は公立高校の方が強かった。対戦相手が山梨学院と聞いたら「ラッキー!よっしゃ」みたいな感じだった。県内の子供たちも多くて、野球人口も多かった。有望な選手が各公立校に進学していった。でも今は人口が少なくなってきて、各公立校にいたような良い選手が私立に流れていく。自然と私立の方が選手が集まるから、レベルが高くなってきている。

 冬は膝ぐらいまで積もる雪が時々降る。東北ほど降らないが、グラウンドは昼はぬかるんで夜は凍るから12月から2月いっぱいは使えない。校舎の廊下でランニングをしたり、体育館でバドミントンの羽根を打ったり、雪上ダッシュをしていた。今はちゃんとウエート場完備の室内もあるし、環境も昔と比べたら数段に良いと聞く。

 地理的にも不利な点があり、選抜に限ると山梨は関東大会を勝ち上がらないといけない。静岡や長野と隣り合っているが関東大会に組み込まれ、埼玉や千葉、神奈川の強豪校に勝たなければ甲子園に出場できない。自分の頃は「関東で1つ勝てれば」という感じだった。今回の山梨学院は関東大会のチャンピオン。自分が生きている間に、甲子園で優勝するチームが出てきたことを本当にうれしく思う。(西武ライオンズ編成プロ担当)

 ◇田辺 徳雄(たなべ・のりお)1966年(昭41)5月11日生まれ、山梨県富士吉田市出身の56歳。吉田高から84年にドラフト2位で西武入団。遊撃手で黄金期を支え、ベストナインとゴールデングラブ賞を2度ずつ受賞。00年は巨人でプレーし、同年に現役引退。02年から指導者として西武に復帰し、14年途中に伊原監督の休養を受け打撃コーチから監督代行に就任。15、16年は監督で現在は編成プロ担当。

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