延長12回劇的サヨナラ打の阪神・近本 ナインのウオーターシャワーから一目散に逃げた理由とは?

[ 2023年4月2日 05:15 ]

セ・リーグ   阪神6ー5DeNA ( 2023年4月1日    京セラD )

<神・D>12回、近本はサヨナラ打を放ち、中野(左)と喜びのタッチ(撮影・奥 調)
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 阪神・近本光司外野手(28)が1日、DeNA戦(京セラドーム)で、5―5の延長12回に守護神・山崎から勝利を呼び込むサヨナラ打を放った。2死無走者から仲間がつないだ満塁のラストチャンスに、148キロ直球を中越えへ。21年以来、2年ぶりとなる開幕連勝を呼び込む劇的な一撃を放ち、歓喜に沸くベンチ前で岡田彰布監督(65)と熱い抱擁を交わした。 

 近本は逃げた。劇打を放ち、一塁を回った直後、ベンチから追いかけてくるナインのウオーターシャワーを“浴びまい”と、一目散に中堅方向へ駆けた。

 「ホーム用の打撃用手袋があと1個しかなかったので、何とかぬらさないように…と思って。ぬれたら明日、試合に出られない…」

 持ち前の快足で何とか逃げ切り、ベンチ前に戻った背番号5を待っていたのは、満面の笑みを浮かべた岡田監督だった。19年7月20日のヤクルト戦以来となるサヨナラ打を放ったヒーローを両腕で抱き寄せ、4時間26分の死闘に終止符を打った殊勲打を称えた。常に冷静沈着な28歳も、この瞬間だけは「(監督の言葉は)覚えてない。言葉とかじゃない」と熱くなった。

 勝利をかけたラストチャンスだった。12回2死無走者から代打・糸原が右前打。続く小幡が四球を選び、坂本の左前打で好機が拡大した。目にした仲間の執念。燃えないわけがない。「イトさん(糸原)の右前には感動した。つないでくれたみんながいたから」。ひと振りに思いを込め、白球を鮮やかに中越えへ運んだ。思えば、4点を追う初回先頭でも左中間二塁打を放ち、反撃ののろしを上げた。近本に始まり、近本に終わった。

 「(安打の)1打席目と最後の打席は、ラインの出し方がよかった。こういう安打が今季は初めから出ている。それがいいか悪いかわからないけど、データとして1カ月、しっかり見ていきたい」

 5年目にして「立つ」――。今年1月、鹿児島・沖永良部島で行った自主トレで、個人トレーナーの植松弘樹氏とともに「立ち方」から見直しを図った。すねの骨である脛骨(けいこつ)が地面に真っすぐ刺さるようなイメージで立つことを意識してトレーニングを敢行。地面からの力をもらえ、筋肉の負担も減った状態で運動ができるよう、全動作の基本となる「立つ」ことから改善に励んだ。全ては故障なく一年を戦い抜き、秋に「水」ではなく「美酒」を全身に浴びるため――。

 「まだ2試合だが、どんな形でも、最後まであきらめずに全員で戦っていく」

 ベンチ入り26人中24人が出場し、近本の言葉どおり総力を結集して制した。虎が勢いに乗るには、十分すぎる劇勝だ。(八木 勇磨)

 ○…阪神のサヨナラ勝ちは昨季6月26日、中日戦(甲子園)以来。昨季はわずか2度。近本のサヨナラ打は19年7月20日のヤクルト戦(甲子園)9回の左犠飛以来、4年ぶり2度目。

 ○…開幕2連勝は21年の3連勝以来2年ぶり。岡田監督は前回阪神監督時代に04年3連勝、08年5連勝。オリックス監督の10年に4連勝と、通算9シーズンで4度目の開幕連勝成功。

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