MLBコミッショナー アナリティック“データ分析”は「行き場のない軍拡競争」転換期が到来

[ 2023年4月2日 09:12 ]

 MLBのロブ・マンフレッドコミッショナーが1日(日本時間2日)、ニューヨークのメディアの重鎮たちが集まる昼食会で約1時間の対話。その中で、過去四半世紀、リーグに大きな影響を及ぼしてきたアナリティック(データ分析)について「行き場のない軍拡競争のようなもの」と興味深い発言をした。スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」が報じている。

 あるベテランのオーナーがコミッショナーに電話をかけてきて、「アナリティックのことはあまりわからないけど、うちではスタッフを75人採用している。1週間現場にいて、この人たちは何をしているのかと知ろうとした。確かに頭の良い人たちがたくさんいる。しかし私は絶対的な確信を得た。アナリティックは行き場のない軍拡競争のようなものだ」と告げた。コミッショナーは笑いながらそのエピソードを紹介し、「私はその考えに同意しているし、好きな台詞の一つになった。事実だからね」と付け加えている。

 「ある球団のアナリティックが他球団より優れていたとしても、今は全ての球団が同じことをしているから、得られるものは少ししか違わない。わずかだ。近年ゲームが被ってきたダメージほどの価値はない」。アナリティックはルール内でいかに効率的にプレーするかを数学的に追い求め、結果シフトでヒットが奪い取られ、盗塁などアグレッシブなベースランニングがフィールドであまり見られなくなった。フロントが数字に支配されることで、試合の中で顕著にアクションが減り、少なくとも多くの人の目にゲームは魅力がないものに映っている。近年のMLBでは、「マネーボール」のアスレチックスなどアナリティクに秀でたチームは尊敬と称賛を集めていた。しかしながら、23年からのルール変更を契機に、風向きは変わりそうだ。もちろん球団のGMたちは、少しでもたくさん試合に勝ちたいから、新ルールの下でもアナリティックを使い続けるし、データで優位に立とうとする。だがそれについてベテランオーナーやコミッショナーが「行き場のない軍拡競争のようなもの」と断じているのは意味が大きい。MLBの野球はマネーボール一辺倒から方向転換、多彩なアクションを追い求めるスポーツに変っていくのだろう。

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2023年4月2日のニュース