渡辺徹さん悼む 語っていたこれからの夢 最期は妻に「手を握っていてほしい」とも

[ 2022年12月3日 05:08 ]

渡辺徹さん死去

2021年、「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー2021」でビールで乾杯する渡辺徹さん、榊原郁恵夫妻
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 今年1月連載の「我が道」を担当した。

 昨年9月から11月にかけてスケジュールの合間を縫い、東京・信濃町の文学座の一室で6回12時間にわたり、話を聞いた。最初の取材では、スリムになり、病み上がりか少しふらつく足元が印象に残った。白いサマーセーターに食べ物のしみのようなものがついていたのを思い出す。

 過食と不摂生がたたってかかった持病の糖尿病。2度にわたる心臓疾患。特に昨年、大動脈弁狭窄(きょうさく)症の手術では2カ月間の入院を余儀なくされた。還暦も迎え、病床で意識したのは死。「死は隣り合わせにあります。限られた残りの人生、何ができるのか?」を考えたという。

 ライフヒストリーを話すときはずっと、はにかんだような表情だったが、自らの死を語ったときは遠くを見つめるような目で「最期は穏やかに死にたい。家族全員にみとってほしいです」。連載では書ききれなかったが、妻の榊原郁恵さんには最期のとき「手を握っていてほしい」とも。

 これからの夢について、商業演劇の大舞台に立ち続ける一方で、「小さな小屋(劇場)でトークライブをやりたい」と例に挙げたのが怪談噺(ばなし)。話芸で魅せる場を作りたいと話していた。

 そして何よりも楽しみにしていたのは長男・渡辺裕太さんの活躍。そして願いは「孫の顔を早く見たい、一緒に遊びたい」。

 死の病から生還し渡辺徹の第2章は始まったばかりだった。円熟の境地に達するまで道半ば。さぞや無念だったでしょう。

 いまごろ天国で、「太陽にほえろ!」で共演し、公私ともに仲の良かった地井武男さん、郁恵さんとの交際期間中、後見役を買って出てくれた石原裕次郎さん、「クラブ活動」と称して番組収録後、飲み明かした志村けんさんらと再会。健康に配慮して我慢する必要もないから、好きなだけ食べ、楽しい酒を飲んでいると願いたい。(文化社会部専門委員・笠原 然朗)

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2022年12月3日のニュース