「おかえりモネ」脚本・安達奈緒子氏 清原果耶に感謝「信じ切って」初挑戦の朝ドラは「貴重な場」

[ 2021年10月16日 08:15 ]

「おかえりモネ」脚本・安達奈緒子氏 書面インタビュー(中)

連続テレビ小説「おかえりモネ」最終週(第24週)の1場面。百音(清原果耶)を待ち受ける未来は?(C)NHK
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 女優の清原果耶(19)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)も最終回(10月29日)まで残り2週間。百音と菅波、未知と亮はどのような結末を迎えるのか。東日本大震災を背景に「人の痛み」と誠実に向き合い、見る者の心を静かに突き動かしてきた感動作。脚本を担当した安達奈緒子氏が書面インタビューに応じ、2年以上に及んだ作劇を振り返った。「『おかえりモネ』は清原果耶さんがいてくれたからこそ表現できた物語です。清原さんを信じ切って書いていました」と“難役”を体現したヒロインに感謝。初挑戦となった朝ドラについては「視聴者の方々とドラマの中で生きる人たちが、『ゆっくり』『時間をかけて』関係性を構築することを許してくれる、とても貴重な場だったと思っています」と捉えた。

 朝ドラ通算104作目。清原とタッグを組んだNHK「透明なゆりかご」やテレビ東京「きのう何食べた?」などで知られる安達氏が手掛けるオリジナル作品。タイトルにある「モネ」は主人公・永浦百音(ももね)の愛称。1995年に宮城県気仙沼市に生まれ、森の町・登米(とめ)で青春を送るヒロイン・百音が気象予報士の資格を取得し、上京。積み重ねた経験や身につけた技術を生かし、故郷の役に立ちたいと奮闘する姿を描く。

 第20週(9月27日~10月1日)から最終章となる第3部「気仙沼編」に突入。百音は故郷・気仙沼の亀島に戻り、地域密着型の気象予報士にチャレンジ。しかし、雨不足に悩む農家の女性らに有効な解決策を示すことができず、自然を相手に無力さを痛感している。結婚を決めた医師・菅原(坂口健太郎)は登米から東京に戻り、離ればなれだが、信頼関係は微塵も揺るがない。

 一方、百音の妹・未知(蒔田彩珠)は地元の水産試験場に残り、家業のカキ養殖も手伝うか、研究に誘われている東京国際海洋大学のAO入試を受けるか、逡巡している。その最大の要因は、想い続けている幼なじみの漁師・亮(永瀬廉)との関係。いつも「大丈夫」と心を開いてくれなかった亮だが、船が難破しかけ、無事生還した後に「オレ、幸せになってもいいのかな」と吐露。ようやく一歩、距離が縮まった。

 「生きてきて、何もなかった人なんていないでしょ。何かしらの痛みはあるでしょ」――。内田(清水尋也)の言葉(第78回、9月1日)に象徴されるように、登場人物それぞれが抱える「痛み」と「葛藤」を時に残酷なまでに、そして、その「救い」と「再生」を背中をさするように“手当て”しながら丹念に紡ぎ上げてきた。ハッシュタグ「#俺たちの菅波」が生まれるなど、連日、関連ワードがツイッターのトレンド入り。SNS上で反響を呼び続けた物語も、ついに2020年1月に突入。どのような未来が百音たちを待ち受けるのか。

 ――「透明なゆりかご」でもタッグを組まれた主演の清原さんについてはいかがですか?耕治(内野聖陽)と朝岡(西島秀俊)の対話を見守った百音の台詞が1つもない回(第69回、8月19日)をはじめ、清原さんの表情が見る者を魅了してやみませんでした。

 「ヒロインの百音は、清原さんを信じ切って書いていました。そして、やはり演じていただけて本当に良かったと思っています。百音は10代にして『当事者でありながら、当事者ではない』という難しい立場に立たされた女性です。たった15歳で強烈に抱いてしまった罪悪感を胸に刻みつつ生きねばならない若者の、しかも19歳から24歳という短い期間を演じることは容易ではなかったと思います。大人として成長していく、いちばん瑞々しく眩しいくらいに輝いている年頃を『痛み』を伴いながら生きる。しかも、その『痛み』は他者から見て分かりやすいものではないので、自分の中に抑えこんでしまったりする。それでも出会った人たちと自身を照らし合わせていくことで、『痛み』と向き合い、昇華させていくさまを、清原さんが緻密に、繊細に表現してくださいました。物語の中で、まるで実際に5年間を経たかのように、百音の顔が19歳と24歳でまったく違います。どうしたらこんなふうに顔が変わるように演じられるのだろうと、思わず画面を見つめてしまいます。わたしはもちろんですが、視聴者の皆さまにとっても、これからもずっと目が離せない存在になっていくだろうと思います。『おかえりモネ』は清原果耶さんがいてくれたからこそ表現できた物語です」

 ――半年間という長丁場の朝ドラは初挑戦になりました。

 「『ゆっくり』『時間をかけて』表現してよい場は、今あまり残されていないように思います。一見して魅力的だと感じてもらえないと切られてしまうし、長いと最後までつきあってもいただけない。でも、この『朝ドラ』というものは、半年近く、なんとなくでもたくさんの方の目の端に入る可能性が高い。学校のクラスにはいるけど、あまり話したこともないし、なんか変な人っぽい、みたいな感じで、ずっとそばにいられたらいいなと思っていました。『ゆっくり』『時間をかけて』接してみたら案外味があるところもあって、一緒にいる時間が今は楽しい、そんなふうに最後は思ってもらえたら嬉しいですし、やっぱり変なヤツだったし、好きにはなれないけど、まあ、あの人の人生だし、それはそれでいいや、みたいに思ってもらえても、それもありがたいと思います。視聴者の方々とドラマの中で生きる人たちが、『ゆっくり』『時間をかけて』関係性を構築することを許してくれるのが『朝ドラ』であり、やはりとても貴重な場だったと思っています」

 ◆安達 奈緒子(あだち・なおこ)2003年、「僕らの未来に子供たちはイエスと言うか」で第15回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞。翌04年、フジテレビのスペシャルドラマ「冬空に月は輝く」で脚本家デビュー。「大切なことはすべて君が教えてくれた」「リッチマン、プアウーマン」「コード・ブルー―ドクターヘリ緊急救命―3rd season」などのフジテレビ“月9”ドラマを担当。19年にはテレビ東京「きのう何食べた?」、NHK「サギデカ」、TBS「G線上のあなたと私」と3本の連続ドラマを手掛けた。11月3日には最新作の映画「劇場版 きのう何食べた?」が公開される。

 =書面インタビュー(下)につづく=

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