球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

ツインズ悩みの種 黒人差別前オーナー銅像移動

[ 2020年6月28日 05:30 ]

 新型コロナウイルスと並ぶもう一つの難題が黒人差別問題だ。「ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大切だ」と差別撤廃を呼びかける運動のきっかけは前田の新チーム、ツインズの本拠地ミネソタ州ミネアポリスで起こった黒人男性が白人警官に殺された事件。長く“差別問題”で悩むツインズは、この運動の流れに乗った。「ターゲットフィールド正面のカルビン・グリフィス前オーナーの銅像を移動させる」と発表したのだ。

 99年に87歳で亡くなったグリフィス氏は、黒人差別主義者で球団の悩みの種だった。ツインズの前身は1901年のア・リーグ誕生と同時に加盟したワシントン・セネタース。1919年に監督を引退したクラーク・グリフィス氏が買収し、55年に養子のカルビン氏が引き継いだ。

 カルビン氏は、黒人市民が多いワシントンを「黒人は野球を見ない」と嫌った。61年に球団をミネアポリス市に移した。ところが、あるパーティーで新聞記者がいるのを知らず「移転理由は、市の黒人人口が1万5000人と少なかったから」と発言。人種差別記事があふれ、悪評が定着した。

 カルビン氏と会ったことがある。40年近く前の冬。ダラスでの集会で、会場を漂っていると水割り片手の紳士に声をかけられた。「日本球団の職員かね?私はツインズのオーナーだ。球団経営の秘訣(ひけつ)を教えよう。野球記者を近づけるな。連中は悪い状況をさらに悪くする」。「私も野球記者ですが…」。大げさに肩を何度も叩かれた。

 当時ドジャース・オーナー秘書のアイク生原さん(故人、日本の野球殿堂入り)に話すと、“とんでも失言”を教えてくれた。84年、チームを買収した現経営陣は「長く問題のある銅像を放置してきたことを謝罪する」とコメントした。 (野次馬)

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