球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

MLB オーナー側の乱暴な提案、今季キャンセルを覚悟?

[ 2020年6月7日 02:30 ]

 ツインズ本拠地のミネアポリス市で先月25日、黒人男性が警官に路上に倒され、首を膝で押さえつけられ死亡した。6年前、ニューヨークで起きた同様の事件での最後の言葉、「息ができない」を繰り返す動画が全米に流れ、怒りは国中に広がった。新型コロナウイルス感染に重なる国難だ。バスケットボール、アメリカンフットボール、アイスホッケーのプロリーグはすぐに「差別反対」の抗議声明を発表した。

 大リーグ機構(MLB)は静かだった。事件後9日がたち「球界はどのような差別も受け入れない」との機構と各球団職員に向けたコミッショナーの内部声明がリークされてメディアが報じた。天国で「黒人選手の先覚者ジャッキー・ロビンソンはあきれたろう」とはニューヨーク・タイムズ紙の皮肉。オーナーと選手は国中の“人権闘争”より“金銭闘争”に夢中だ。

 開幕延期を決めた3月の合意は、レギュラーシーズンの半数82試合以上の開催へ向けて努力する。選手は年俸減額を認め4、5月は前払い、その後はプレーした試合数に応じた分割払いだ。ところが、オーナー側は「入場収入なしの無観客試合は分割年俸の対象外」とか「50試合実施」など、年俸カット増の合意破り提案を連発。拒否した選手会は「114試合」を主張、妥協は難しい。

 とはいえ「オーナー側の50試合がレギュラーシーズンと言えるのか」とメディアも批判する。昨季の王者ナショナルズは50試合時点で19勝31敗だった。逆転ドラマなしのミニ・シーズン。その実施でも3週間のミニ・キャンプが必要だ。交渉に残された時間は今週いっぱいか?オーナー側の乱暴な提案は「今季キャンセル」を覚悟した球団が出始めたためではなかろうか。 (野次馬)

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