球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

大リーグでファウルボールで事故多発…早急に対策を

[ 2019年6月9日 12:00 ]

 カブスのアルバート・アルモラ外野手の打ったライナーが三塁側スタンドに飛び込んだ。打球を目で追ったアルモラは打席で凍りつき、球場全体が息をのんだ。

 5月29日、遠征先のアストロズ戦。試合後アルモラは言った。「目に入ったのが幼い女の子の顔だ。私は残りの人生を彼女と向き合っていきたい。私も2人の男の子の父親だから」。片膝をつき泣くアルモラを次打者ジェーソン・へイワードとジョー・マドン監督が打席に導いた。空振りの三振、スタンドからまばらな拍手…。少女は砕かれた顔の骨を修復、脳にたまった血液を取り除く手術。

 1週間後のマンフレッド・コミッショナーの声明がひどい。「防護ネット延長するようにしたい。ただし今季は無理、来年になる」。2年前、ヤンキースタジアムで起こった幼女負傷の時の繰り返し。昨季のファウル数は98年より1万4000多い、とデータ会社。選手を目の前で見せる高額席増設で、どの球場もファウルゾーンが狭くなりスタンド入りのファウルも激増した。選手たちは「飛ぶボールが高速で目前の内野スタンドに飛び込む。家族の観戦は前列ではノー」

 2年前の事故後、しばらくして大リーグ機構(MLB)は「バックネットからダッグアウト端まで防護ネットを張ることが望ましい」とガイドラインを示した。日本の球場同様に外野まで防護ネットを張った球団もあるが、今季MLB基準に全球場がそろった。
 そこに今回の悲劇。実は、昨季8月、ドジャースタジアムでファウルボールに当たった79歳の老婦人がその後亡くなり、球団が知ったのは2月だった。MLBもオーナーも関心が薄い。改善に待ったなしだ。 (野次馬)

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