球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

“無職100人”変わりゆくストーブリーグ

[ 2018年2月11日 05:30 ]

 大リーグ選手会のトニー・クラーク専務理事は警告した。「2月も第2週に入りキャンプ目前というのに100人近いFA選手が無職でいる。競争こそが野球の高潔さであると我々は信じていたが、今や球団は経費節減競争だ。選手会の宝のFA制度は壊滅しかかっている」。そんな声に呼応して大物代理人の一人がキャンプのボイコットを呼び掛けたが、メディアの冷笑を浴びただけ。IT(情報技術)とAI(人工知能)のデータ分析が野球の戦い方、チームづくりを急速に変えた。

 先発投手の存在感は薄れ、パワーピッチャーの継投でパワーヒッターと対決する。打者はヒットよりホームランだけを狙う。本塁打が増え、四球と三振が増え、投球数の増加。そして試合時間は大リーグ機構がさまざまな新規則で急がせても長くなるばかり。選手OBのベテラン解説者は「技の野球が消え、試合は3時間のホームラン競争になり果てた」と嘆く。

 年を重ねたFAの価値は下がり、優勝目前のチームはFAになる1年前の実力ある選手をポストシーズン用で7月、8月にトレードで獲得し、勝っても負けてもシーズン後に放出する。成功例がチャプマン(現ヤンキース)で16年に世界一のカブス、失敗が昨季の世界一を逃したダルビッシュのドジャースと、使い方も評価も実にドライ。

 選手会は球団に見てもらおうと無職FAのためにフロリダでキャンプを開設した。「球団の狙いは若手ばかり。憧れのFAになって職待ちとは」と選手たち、まるで“ハローワーク”だ。データによる選手探しでどの球団もスカウトの解雇が続く。何人スカウトが来てくれるのか。開幕時の30球団の年俸総額は9年ぶりに下がるとメディアは確実視…。拾い集めたストーブ情報は、変わりゆく大リーグ冬景色を映し出す。 (野次馬)

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