球児引退 高校時代の恩師が振り返る「寺での座禅修業」 勝負事には向かない気弱な守護神

[ 2020年11月11日 05:30 ]

阪神・藤川球児引退試合 ( 2020年11月10日    甲子園 )

09年12月、高知商時代の恩師・正木陽氏(左)とトークで盛り上がる藤川

 現役引退を迎えた阪神・藤川球児投手(40)に対し、高知商時代の恩師である正木陽氏が、メッセージを送った。

 入学して初めてブルペンで投げた時、球速は124、5キロぐらいだったんですよ。ただ、きれいなフォームでバックスピンのかかった、いい球筋。これはうまくいけばプロにいけると直感しました。何より印象に残ってるのがフィールディング、けん制の間だったり。投球以外の部分がすごく優れていた。バント処理で二塁で刺すようなシーンが本当に多かったですから。

 球児が1年の秋、四国大会出場をかけた県大会準決勝で明徳に負けたんです。明徳とは紙一重の差。監督としてはここで何かを変えないと…と感じました。球場の裏にある寺に球児、兄の順一も連れて週に3回座禅を組ませて。何かをつかんでもらいたかったんです。球児が2年の夏に明徳に1―0で勝って甲子園にいけました。

 ドラフト指名されてからは「細く長くやれ」と言い続けてきました。毎年5勝を10年続けたら1億円になると(笑い)。10勝してもすぐクビになったらあかんよと。本当は気が弱いし、繊細やし、優しい。僕は勝負ごとには向かないと思っていたんです。でも、気が弱いからこそ、腹をくくれる部分もあるんですよね。それが守護神というポジションにハマったんでしょうね。

 体も弱かったし、肘にも爆弾を抱えてましたし、本当に奇跡みたいな子。松坂君、杉内君は素材通り。でも、球児は違います。2、3年でクビになってますよ。気の弱い子がそのまま大きくなって、奇跡のようなボールを投げてるんです。

 7月に電話した時に「先生、僕はよく投げてきましたよ」と言ってるのを聞いて辞めるかもしれないなと感じました。今は「お疲れさま」という言葉しかないですよ。本当に長い間、楽しませてもらいましたし“太く長く”やってくれました。球児、ありがとう。 (現高知商野球部総監督)

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2020年11月11日のニュース