【これで聞き納め!球児会見(4)】「うん、野球好きなんだな。まだチャレンジしたいんだなと」

[ 2020年11月11日 06:38 ]

阪神・藤川球児引退試合 ( 2020年11月10日    甲子園 )

<神・巨24>背番号22を指差す藤川(左)のサービスにファンも大喜び(撮影・北條 貴史)
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 阪神・藤川球児投手(40)が10日の巨人戦で引退試合に臨み、慣れしたんだ“最終回”に登板した。今季最多2万1392人を集めた本拠地・甲子園球場で「火の玉」と称された全12球の直球勝負で2三振を奪うなど打者3人を抑え、22年間の現役最後のマウンドを終え、引退会見を行った。

 ――きょう納得できる球は12球のうち何球ぐらいあったか。
 「結構ありましたね。坂本君の時は多かった。高めに抜けたボール以外は良かったですね、自分では。ちょっとブルペンで投げ方いいのあるなって見つかったんで。明日になればもっといいんじゃないかな。だけど、そうやって思えてることの方が幸せと思うんですよね。“ああもう投げられない、悔しい!”って思うところはもう過ぎているんで。あったんですよね、皆さんには分からないところで自分にもそういう時期があったんで。それを見せずに終われたことは良かったんじゃないかと。自分には分からないですけど。十分いい球があった。中島選手の時にはなんかオールスターでたくさん対戦したことを思い出しながらと思ったけど、納得いかなかった、申し訳なかったですね」

 ――12球のうち2回振りかぶって投げたが。
 「150キロを狙ったんですよ。だけどその時の方がボール遅かったじゃないですか。それがやっぱりいかに鍛錬を積んできたフォーム。まだ新しいことをしようとしているじゃないですか、そこで。うん、野球好きなんだなと思いました。今振り返ると、その時のフォームが一番早いっていう答えがまだ出ていなくて。今までに普通に投げていたフォームが自分の答えなのに…。なのに違うことをしてスピードを上げようとするっていうのは、自分もまだ自分にチャレンジしていたんだなと今、思います。だけど大事な時にボールが遅かったし、もうちょっと練習しようかな、なんて今も思いますね」

 ――やろうと思ってではなく自然にやっていた。
 「148キロだったんで納得いかなくて、何とかと思ってやったんですけど、バッターにも失礼に当たることになったら嫌なんで。あれは相手に対して一番いいストレートを見せたいっていう表れなんですよね実は。“うわっ、球児さんいいボール来てるな”って思われたいがための…。あそこが18・44(メートル)の、そこが深みなんですよね。そこに会話はいらないんですよね。そこに見ている人の感動を呼んだり、“うわっボールすごいな”とか“バッティングすごいな”っていうのが出るんで。マウンドだけはうそはなかったですね」

 ――12球すべてストレート。込めた思いは。
 「本当は12球投げていくうちに、いつもならたくさんの声援が後押しするんですよね。それがないんですよね、やっぱりコロナで。たぶんコロナだと思うんですけど、声を出しちゃいけない、しかも入場者の方々も限られている。そこが実は自分の中で今までと目を閉じて考えると違うんですよね、光景が。やっぱり満員でやってきたんで。12球のストレートを投げていくうちに本当なら上がっていくはずなんですよね。だけど何でかって考えると、投げる瞬間を今思い出しても、後ろから押されるものが…ないんですよね。その後にセレモニーの中で言いましたけど、ファンの人たちの気持ちの自分は固まりだったんだなっていうのを声援で感じていたんですよね。で、ジャイアンツはそれを脅威に感じていたんですよね。やっぱりプロ野球の醍醐味って、プロスポーツの醍醐味って素晴らしいプレーには拍手が起こって。ダメなプレーにはヤジが出て。っていうのがお客さん、ファンの方に自由にさせてあげないといけないんじゃないかなと僕は思うんですよね。その上でいいボールを投げて、あの12球を投げてみたかったかなというのは心残りかもしれないです」

 ――勝手な印象だが、ファンは声を出すより目に焼き付けたかったんじゃないか。
 「自分はそういうところは見ないようにしていたんですよ。その人からの視線、ファンの方からの視線を感じるようになると、ピッチングに集中できないし。今までも実はその経験はないんですよ。だけど後押しっていうのは、空気感っていうか本当に声援なんですよね、実はね。それに気付いたかな…気付いてはいたんですけど、うん…。最後1周(場内を)回っている時も感じましたね。優勝した2005年に回ったときの感覚よりも、さらに自分のファンが多いはずなのに、みんながどことなく何かを制限していてっていう。そういうところに歯がゆさを覚えたりして、その分、笑顔が多かったのかもしれないですね、もしかしたら。何かを力にして返さなきゃいけないっていうふうな思いが出たような気がします。ほんとに大歓声をもらいながらずっと投げていたら、“うわっ、こんな姿なのにありがとう”ってなっていたかもしれないですけど。自分が今ある力を最大限に出して、もしかしたら…うそではないですけど、ユニホームを着ている宿命というか定めというか。プロの選手として必要な姿っていうのは、何かを世の中に元気を伝える。だけど(ユニホームを)脱いだ今となっては、もしそれ(大声援)があれば…とは感じますね。なんで早くコロナっていう、こういうものから皆さん解放されて、そういうところで物事がうまく進まなかったり…っていう世の中は早くなくなってほしいなと思いますね」

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2020年11月11日のニュース