原監督“お薦めの歴史小説”が導いた、火坂雅志氏との出会い

[ 2020年9月25日 09:30 ]

火坂雅志氏=2010年8月撮影
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 08年から10年まで巨人担当キャップを務めた。特に印象的だったシーズンは阪神との13ゲーム差を跳ね返して逆転リーグVを決めた08年。プロ野球記者として貴重な経験を積んだが、あることで原監督に感謝している。

 担当記者もチームと同様に日本全国を回る。そして試合のない移動日などは空港や新幹線のホームで原監督や選手を取材する。ある時、火坂雅志氏の小説「天地人」を手にしていた原監督に「お薦めの歴史小説を教えてください」と言うと、天地人の他に浅田次郎氏の「壬生義士伝」、隆慶一郎氏の「影武者 徳川家康」を薦めてくれた。

 読みやすい小説を教えてくれたのだろう。3冊とも一気に読破。その後も原監督とは歴史小説の話題で盛り上がったが、ある日の紙面にも生きた。破竹の9連勝で首位・阪神とついに1ゲーム差に迫った同年9月20日。試合後に関係者と歴史小説について雑談していると、その関係者が「そういえば…」と、ある情報を提供してくれた。

 まだまだゲーム差が離れていた7月下旬。試合前のミーティングで原監督がナインに「天地人」の主人公で「利」を求める戦国時代に民衆や郷土への「愛」を貫いた主人公・直江兼続を紹介し、「私利私欲ではなく、チームのために頑張ってくれ」と語りかけた、という情報だった。まさにそこからハイペースで白星を積み上げての首位肉薄。すぐに会社に報告して1面の原稿を仕立てた。

 この1面がさらなる展開を呼ぶ。後に天地人が文庫化された際、「上」の巻末で火坂氏とNHK大河ドラマで直江兼続を演じた妻夫木聡との対談が掲載され、その中で火坂氏が「天地人は色んな社会的影響を与えたと思うんですけど、小説がジャイアンツの2008年の優勝に関わっているんです」と言及。自分が書いた紙面を紹介してくれたのだ。嬉しくなって出版社に電話し、ダメ元で火坂氏に取材を申し込むと、まさかのOK。神奈川県内の別荘にお邪魔して色々な話を聞き、サイン入りの小説や色紙など原監督へのプレゼントまでいただいた。

 その火坂氏は15年に58歳で死去。いつか「夢の対談」を思い描いていただけに、訃報を伝えた際に原監督も「会ってお礼もしたかった。残念…」と肩を落としていた。

 学生時代はほとんど本を読まず、読書感想文も適当に書いていた記者が、08年を境に歴史小説にはまり、現在も読書が習慣となっている。火坂氏との出会いも大切な思い出。原監督のおかげだ。(記者コラム・山田忠範)

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