【内田雅也の追球】“スミ3”の憂鬱 追加点取れぬ阪神 巨人追走への課題 好機での心構え

[ 2020年9月13日 07:30 ]

セ・リーグ   阪神3―1広島 ( 2020年9月12日    甲子園 )

<神・広(16)>8回無死二塁、好機にボーアは遊ゴロに倒れる(撮影・坂田 高浩)
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 阪神は近本光司が回の先頭打者として3打数3安打した。近本は回の先頭で今季、打率3割3分6厘(113打数―38安打)とよく打ち、それ以外での2割5分(152―38)を大きく上回る好成績を残す。切り込み役の1番として適性が見えるようだ。

 しかも、直後には前日11日から2番に入る梅野隆太郎が3度の無死一塁でいずれも送りバントを決めた。すべて初球で成功させ、リズム良く1死二塁の好機をつくった。

 ところが、近本が本塁に還ったのは1回裏、大山悠輔の先制3ランの時だけだった。この3点以降、追加点を奪えなかった。「スミ1」ならぬ「スミ3」だったわけだ。勝つには勝ったが、気分は晴れない。そんな憂鬱(ゆううつ)がある。

 監督・矢野燿大は前夜の勝利後、巨人を追いかける課題として「もう1点。走者を置いてのバッティング」をあげ「もっともっと上に行ける」と話していた。

 その課題がさらにはっきりしたような試合展開だった。追加点と好機での打撃である。矢野も試合後に言った。「まずチカ(近本)が出て、というのがウチの野球。ただ、あと1本。そういう試合が続いている」

 大山3ランを除くと、チームとして得点圏でのべ10人が打席に立ち、9打数無安打(1四球)だった。1回裏は3ランの後の2死二、三塁。5回裏1死二塁。7回裏1死二塁。8回裏無死二塁。すべて適時打を欠いた。

 今季初の甲子園でのデーゲーム。大山がアーチをかけたころはまばゆい空に白球が舞ったが、試合が進むにつれ、青空は雲に隠れてしまった。

 チーム打率はリーグ5位の2割4分3厘の阪神だが、チーム得点圏打率は2割7分5厘で巨人の2割9分2厘に次ぐ2位と決して勝負弱い打線ではない=成績は11日現在=。ただ、巨人を追いかける正念場にきて、好機での凡打が目立つのだ。

 球団テクニカルアドバイザー(TA)・和田豊は指導者として好機での心構えを「ウォーム・ハート、アンド、クール・ヘッド」(心は熱く、頭は冷静に)だと説いた。「相手バッテリーはピンチで、より厳しく攻めてくる。オレが……と熱い気持ちになるのはいいが、打つべき球、捨てる球など、頭をすっきりさせて打席に入ることだ」。監督時代、スローガンを『熱くなれ!』とした裏側で冷静さも求めた。

 和田が指南する言葉は近代経済学の父と呼ばれたアルフレッド・マーシャルの名言「クール・ヘッド、バット、ウォーム・ハート」(冷静な頭脳、されど温かい心)からきている。ケンブリッジ大の学生に「経済学を学ぶには冷静な頭脳に加え、人びとを豊かにしたいという温かい心が必要だ」と説いた。高校3年の春、政経の授業で習ったのを覚えている。

 各打者が何とかしようとする闘志や情熱は伝わってくる。ただ「熱く」より「温かく」ぐらいで打席に入るのがちょうどいいのかもしれない。=敬称略=(編集委員)

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