これぞ帝京魂!全員野球で延長サヨナラ 甲子園51勝・前田監督9年ぶりの復活V

[ 2020年8月9日 05:30 ]

東東京決勝   帝京3―2関東第一 ( 2020年8月8日    大田 )

<帝京・関東第一>選手との記念撮影を終え引き上げる前田監督(中央、撮影・村上 大輔)
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 「魂」のサヨナラ劇だ。帝京が8日、東東京大会決勝で延長11回の末、関東第一に3―2でサヨナラ勝ち。甲子園通算51勝の名将・前田三夫監督(71)が夏は11年以来、9年ぶりの頂点に立った。強豪が低迷期を乗り越えて復活を遂げ、10日に西東京の覇者・東海大菅生と対抗戦(ダイワ八王子)を行う。都道府県高野連が独自に開催する代替大会は、全国で79試合が行われた。

 138キロ内角直球を捉えた打球が、左翼頭上を越えていく。延長11回1死一、二塁、打った新垣煕博(きはく)捕手(3年)は雄叫びを上げながら一塁を回り二塁塁上でガッツポーズを繰り出した。劇的なサヨナラ優勝。ナインに頭を叩かれ、歓喜に浸った。

 「監督さんに恩返しができたかな。打てない時もずっと使ってくれて…。越えた瞬間、笑顔が浮かびました」。沖縄から越境入学した背番号2が、前田監督に頭を下げた。

 通算51勝の強豪は11年以来、聖地から遠ざかっていた。当時は寮設備がなく、学校まで通学が可能な東京や埼玉県出身が大半。寮設備のあるライバル校との差が開いた。そこで18年、遠方からの生徒を受け入れられるよう、大学生らが利用する学生会館を下宿に確保。その1期生が、大阪出身の加田拓哉主将や小松涼馬(ともに3年)、新垣だった。

 前田監督は「学生会館なので食事面も管理してもらえる。加田や小松はやはり関西出身だからなのか気持ちが強いし、仲間にも厳しいことをどんどん言える。雰囲気が良い意味で変わった」と効果を語る。加田や小松はなれ合いを許さず、時にケンカもしながらチームを勝つ集団に変身させた。3年目、3人はクリーンアップとしてけん引。帝京復活の大きな原動力となった。

 5番打者の新垣は南国特有の、おおらかな性格。だが、4番で出場した昨秋の都大会決勝・国士舘戦で4打数無安打に終わりチームも零敗を喫すると、目の色を変えた。投手との練習後にフリー打撃で連日、汗を流す姿を見てきた加田は「一番苦労したから、良かったな」と肩を叩いた。

 6月2日、コロナ禍の活動休止を経て約3カ月ぶりに練習再開。目標を失い士気が下がった時期もあった。「最後まで高校野球やろう。2年間がムダになるぞ」。前田監督はハッパを掛けつつ、加田に「おまえのチームなんだ」と選手間の対話を促した。プロ志望届を出す予定の傑出した3年生はいない。全員野球で準決勝、決勝とも逆転劇を演じた。

 帝京に今夏、甲子園の舞台はないが、もう1試合戦える。10日の西東京大会覇者・東海大菅生との頂上決戦だ。新垣は指揮官を見つめ「東京一の監督にしたい」とナインの気持ちを代弁した。(伊藤 幸男)

 ◆前田 三夫(まえだ・みつお)1949年(昭24)6月6日生まれ、千葉県袖ケ浦市出身の71歳。木更津中央(現木更津総合)では三塁手。帝京大時代に練習をサポートしていたことから卒業後に帝京の監督に就任した。78年春に甲子園初出場し、89年夏に吉岡雄二投手(現日本ハム2軍打撃コーチ)を擁して全国制覇。92年春、95年夏にも日本一に導いた。歴代4位タイの甲子園監督通算51勝。

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