【柔道】大野の絶対的自信 相手に攻めさせながら活路見いだす“名人”の柔道―上水研一朗の目

[ 2021年7月27日 05:30 ]

東京五輪第4日 柔道男子73キロ級 ( 2021年7月26日    日本武道館 )

男子73キロ級決勝、シャフダトゥアシビリ(奥)を破り金メダルを獲得した大野(撮影・小海途 良幹)
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 大野には大外刈りという絶対的な得意技がある。しかし、それは彼にとってあくまで選択肢の一つで、唯一無二ではない。それを証明したのは、決勝で勝負を決めた支え釣り込み足だ。大外は相手を後ろに倒す。大外を警戒した相手が重心を前に移した瞬間に、前に引き倒す技を選んだ。

 リオ五輪後、世界中の柔道家の目標となった大野は、自分から攻めて逃げられるより、相手に攻めさせながら活路を見いだすことを最終的に選んだように思う。無理やり攻めてくる相手には必ず隙が生まれる。絶対に仕留める自信があるからこその戦法だろう。技の出が遅い印象を持った方もいるだろうが、大野が披露したのは相撲で言うところの「後の先」の領域、つまり名人の柔道だった。

 現代の柔道は世界のさまざまな格闘技の要素をのみ込み、多様化している。その中で、得意技だけで百戦百勝することは不可能に近い。ニッポン柔道が世界での勝利を今後も追求していくのであれば、究極は、得手不得手のない「真円」のような大野の柔道をお手本にすべきだと思う。(東海大体育学部武道学科教授、男子柔道部監督)

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2021年7月27日のニュース