大野が連覇!5年分の執念「つらい日々を凝縮したような一日だった」決勝延長9分超制し日本勢7人目

[ 2021年7月27日 05:30 ]

東京五輪第4日 柔道男子73キロ級 ( 2021年7月26日    日本武道館 )

男子73キロ級決勝、金メダルを獲得し気迫の表情を見せる大野(撮影・小海途 良幹)
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 最強の王者が誕生した。男子73キロ級で、16年リオデジャネイロ五輪覇者の大野将平(29=旭化成)が金メダルを獲得。柔道日本代表では史上7人目となる五輪2連覇の偉業を達成した。男子の日本勢も初日から3日連続金メダル獲得の快進撃。女子57キロ級でも初出場の芳田司(25=コマツ)が銅メダルを獲得し、出場全6選手によるメダルラッシュに沸いた。

 5年前は決勝でオルジョイをなぎ倒した後、ふてぶてしい表情のまま畳を下りた。来年2月には30歳。「ベテランと言われるところまで来た」と自覚する今回は違った。こみ上げるものを抑えようと、ぐっと歯を食いしばる。深々と、時間をかけて一礼し、「武道の聖地(日本武道館)で試合をすることも、もう少ないと思っている。この景色を焼き付けようと」と、天井を見上げた。

 圧倒的な強さから、絶対的な強さへ。自己顕示するように、事あるごとに自分自身を「大野将平」とフルネームで呼び、目標は「リオの大野将平を超えたい」だった。そのために、誰よりも自分に厳しく過ごしてきた5年間。「苦しくて、つらい日々を凝縮したような、そんな一日の戦いだった」と5試合の激闘を振り返った。

 鮮やかに一本で勝てたのは準々決勝まで。準決勝、決勝はゴールデンスコアの延長戦にもつれ込み、「感じたことのない恐怖」に襲われた。ともに守りが堅く、フィジカルも強い相手。決勝のシャフダトゥアシビリ戦は先に指導2で追い込まれた。「昔の自分なら心が折れている」というが、5分すぎ、間合いが詰まったところで無意識に出た支え釣り込み足で技あり。絶対王者を目指してきたが、「勝負に絶対はない」と実感した9分超を振り返った。

 孤高の存在でありたい。その思いが、行動と言葉に表れた。17年は金メダリストの権利を行使し、体重無差別で争われる全日本選手権に挑戦。2階級上の選手に敗れ、本気で悔しがった。自身の大外刈りをテーマにした修士論文執筆中には同世代の橋本壮市が台頭したが、「比較されているようではまだまだ」と不満を隠さなかった。2度目の五輪は1年5カ月ぶりの実戦。自ら課した山を次々に乗り越えたからこそ、連覇の偉業にたどり着いた。

 00年にシドニーで金メダルを獲得後、王者として4年間を過ごす苦しみ、04年のアテネではまさかのメダルなしに終わった失意を知る井上康生監督は言った。「私がこれまで見てきた柔道家の中でも、世界最強だと思った。正直に言って、心から感動した」。最大級の賛辞を贈られた大野も「今は胸を張って歴史をつくったと言える」とかみしめた。

 史上初の五輪延期で、苦しみの時間は1年長くなったが、今も指導を仰ぐ天理大の穴井隆将監督から授けられた座右の銘「集中、執念、我慢」で乗り切った。「私の柔道人生はまだ続く。今後も自分を倒す稽古を続けたい」。次に目指すのは3連覇ではなく、東京五輪の大野将平を超えることだ。

 ◇大野 将平(おおの・しょうへい)1992年(平4)2月3日生まれ、山口市出身の29歳。7歳で競技を始め、中学から柔道私塾・講道学舎に入門。世田谷学園―天理大。13、15、19年の世界選手権を制し、16年リオ五輪で金メダル獲得。17年は一時競技を離れ、本格復帰した18年はアジア大会優勝。旭化成所属。得意技は大外刈り、内股。右組み。1メートル70。

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