驚くほどどの時代も記憶が鮮明だった中尾彬さん

中尾彬さん死去

19年3月、「俺の顔」でインタビューに応じる中尾彬さん
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　【悼む】2019年3月、インタビュー場所に指定されたのは東京・上野精養軒。本人がなじみでお気に入りの店だった。「極道の妻たち」シリーズ、北野武監督の「アウトレイジ　ビヨンド」「龍三と七人の子分たち」での多彩なやくざ役、「ゴジラ」シリーズでのGフォースの司令長官役が印象深い。特にやくざの幹部を演じた時は、あのギョロリとした目で見据えられるとスクリーン越しでもドキッとしたものだ。

　多少の萎縮はあったと思う。だが、初めて対峙（たいじ）した本人は柔和な笑顔で迎えてくれ、紙面の説明をすると「（タイトルの）俺の顔ねえ。何を話そうか」と興味津々の様子。バリトンの声はみぞおちに染み入るようで、柔らかい語り口の言葉一つ一つに引き込まれた。大御所俳優の幼少期から現在地までを聞かせていただいた貴重な経験。どの時代も記憶が鮮明なことにも驚かされた。

　当時は終活がひと段落した頃で、悠々自適に余生を楽しもうとしていたが、好奇心はまだまだ旺盛で楽器、特にサックスをやってみたいとも話していた。実際に手にしたかは分からないが、その演奏を拝見できなかったのが心残りだ。　（スポニチ映画担当・鈴木元）