中尾彬さん もがき続けた中でつかんだ当代一の悪役「こっちが主役だと思ってやっていた」

[ 2024年5月23日 05:14 ]

中尾彬さん死去

中尾彬さん
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 中尾さんは、味のある悪役や憎まれ役として異彩を放った。時代劇なら悪徳商人や悪代官。現代劇ならやくざの幹部や犯罪者などを巧みに演じ分けた。北野武名義で映画「アウトレイジ ビヨンド」などに起用したビートたけし(77)も「また一人、いい役者がいなくなった。大変ショックです」と追悼。同作でも、裏切りの連鎖で無残な最期を遂げるやくざの幹部を見事に演じ切っている。

 そんな中尾さんの役者への憧れの原点は小学生の時だ。地元の千葉県木更津市で行われた映画「足を洗った男」(1949年)のロケを見学し、主演の長谷川一夫に「おじさん、僕も役者になりたい」と直談判したことがある。その際は「高校を出たらまた来なさい」と諭されたが、当時の思いがやがて実ることになる。

 61年に日活ニューフェイスに合格。当初から出演作には恵まれたが、チンピラ役が中心。「毎回、同じメンバーで駒を動かしているだけという気がして、芝居をちゃんと基礎から学ばなければいけない」と一念発起。63年に劇団民芸の研究生となった。

 フリーとなった後は、テレビドラマにも活躍の場を広げていった。だが、30歳を過ぎたあたりから「役柄が限られている」と感じることが増え、殻を破ろうともがき続けた中でつかんだのが悪役だ。2時間ドラマの黎明(れいめい)期と重なり“裏のある顔”で存在感を高めていった。「人を殺したりだましたり、普段はできない行動ができるし、人間の裏表を演じることが面白いと分かった。悪役でも、こっちが主役だと思ってやっていた」と自らの糧とした。

 70年代後半からは「白昼の死角」「極道の妻たち 最後の戦い」「激動の1750日」など東映アウトロー・やくざ路線の常連に。役作りに関しては脚本を読み込み、衣装合わせなどの初期段階から監督らと綿密に話し合って自身の体に取り込むことに徹底していた。「撮影中は普段の口調まで変わる。それだけの覚悟があったんだと思う」と振り返っている。メークの入れ墨を落とさずに帰宅して、池波が顔つきの違いに驚いたこともあったという。

 「ゴジラ」シリーズでは司令長官や首相役だったが「ゴジラにとっては(人間は)敵だからね」と“悪役”への矜持(きょうじ)を示した。年を重ねるごとに風格も増し、自身の個性を最大限に生かして威風堂々を体現し続けた役者人生だった。

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