小栗旬“30代ラスト”今年の漢字は「悪」ダークヒーロー義時完遂「鎌倉殿の13人」→舞台「ジョン王」へ

[ 2022年12月17日 05:00 ]

5年ぶりの舞台「ジョン王」に主演する小栗旬。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の撮影終了後、初の作品となる
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 俳優の小栗旬(39)が今月26日に開幕する舞台「ジョン王」に主演し、5年ぶりの舞台に挑む。主演を務め、18日に最終回を迎えるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)の1年5カ月にわたる撮影を終えた後、初の作品となる。シェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指してきた「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の“真の完結作”となる注目の歴史劇。稽古中の小栗に手応えを聞くとともに、今年1年を振り返ってもらった。

 今シリーズは彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督・蜷川幸雄氏の下、シェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指し、1998年1月に第1弾「ロミオとジュリエット」からスタート。今回の「ジョン王」は第36弾として2020年6月に上演予定だったが、コロナ禍のため中止。21年5月に最後の第37弾「終わりよければすべてよし」が上演され、いったんシリーズ完結を迎えた。

 しかし「ジョン王」を上演しないことにはシリーズは終われない。蜷川氏から2代目芸術監督を引き継いだ吉田鋼太郎の強い思いから、上演が決定した。

 「鎌倉殿の13人」は10月25日にクランクアップ。小栗は約1週間後には「ジョン王」の台本読みに取り掛かり、その約1週間後には稽古がスタート。「大河の撮影が終わってから2週間で稽古開始というのは、流石にきついものがありましたね。もう台詞も覚えなくなかったですし、全然気も乗らなかったですけど(笑)、鋼太郎さんから頼まれたので頑張っています」。「鎌倉殿の13人」は脚本の三谷幸喜氏が和田義盛(横田栄司)と源実朝(柿澤勇人)の関係性に「ヘンリー四世」に登場する人気コンビ、老騎士・フォルスタッフと若きハル王子を重ねるなど、シェイクスピアの要素が盛り込まれたが「もちろん言葉も全く違いますし、こっちは基本的に台詞が長いので。もう面倒くさいです(笑)」。ジョーク交じりの自虐的な発言は“親友”吉田からのオファーゆえだ。

 小栗の舞台出演は17年のミュージカル「ヤングフランケンシュタイン」以来、5年ぶり。「彩の国シェイクスピア・シリーズ」出演は06年の第15弾「間違いの喜劇」以来、実に16年ぶり4作目。「ジョン王」はシェイクスピア作品のうち、現在は最も上演される機会が少ないといわれる。

 イングランド王ジョンの下へ、先王リチャード1世の私生児だと名乗る口の達者な男が現れる。ジョンの母エリナー皇太后はその私生児フィリップ・ザ・バスタードを親族と認め、従えることを決める。そこへフランス王フィリップ2世からの使者がやってくる。ジョンは正当な王位継承者である幼きアーサーに代わってイングランド王となっていたが、「王位をアーサーに譲り、領地を引き渡すよう」に要求しにきたのだ。それを拒んだジョン王は、私生児を従えてフランスと戦うために挙兵する。まんまと王族の仲間入りをした私生児は、権力者たちの愚かな振る舞いを鼻で笑いながらも、戦争へと巻き込まれる。権力者の思惑に振り回され、世界は混迷を極めていく…。

 地味な上に「つまらない」とまで言われることもある「ジョン王」だが、私生児役の小栗自身も「戯曲だけ読んでいると、何をどう面白がっていいのか本当に分からない作品」と感想。それが自身初の吉田演出を受け「僕の演じる役が劇中の世界と客席をつなげる役割を担っていて、戦争というものがこれほどまでに人の人生を変えてしまうのかということを、観客の皆さんにより近い形で、実感を持って受け取っていただけるのかな、と。稽古を重ねてきて、作品の輪郭の一辺が見えてきました」と戦火が続く現在にも通じるテーマを説明した。

 常軌を逸した混沌の世界が描かれるため「ここまでエネルギーのある芝居は、最近なかなか見られないんじゃないですかね。(メガ盛りの)『ラーメン二郎』みたいな舞台だと思います(笑)。(トッピング)“全部乗せ”でコテコテなのに、もう一度食べたくなるような」とユーモアたっぷりにアピールした。

 2年前に中止となったがゆえに、俳優人生の原点の一つとなった「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の掉尾を飾る巡り合わせ。しかも、初日(12月26日)は節目の40歳の誕生日。「『さい芸(さいたま芸術劇場)』が改修工事中なのが残念なんですけど、シリーズのラストということはあまり意識していなくて、蜷川さんと鋼太郎さんとご一緒させていただいてきたシリーズにもう一度参加できること、蜷川さんから鋼太郎さんが引き継いで今こうやって稽古をしているということは、やっぱり感慨深いものがあります」としみじみ語った。

 大河ドラマ出演8作目にして初主演を勤め上げた「鎌倉殿の13人」は18日に最終回「報いの時」。鎌倉幕府2代執権・北条義時(小栗)と朝廷の“最終決戦”「承久の乱」(1221年、承久3年)の合戦を迎える。

 30代ラストイヤーは“大河漬け”から休む間もなく演劇と芝居一色の日々。最後に今年の漢字1文字を尋ねると、少し思案し「『悪』ですかね」と明かした。

 「後半はダークヒーローになった義時を最後まで演じ切って、完結できたことが自分にとっては非常に大きかった1年。『義』や『時』の字もありますけど、やっぱりいい意味の『悪』ですかね。“全部小栗のせい”と嫌われたり、率直な評価を頂けたのは役者冥利に尽きますし、いい意味で『悪』というものを視聴者の皆さんに愛していただけたのかもしれません。そうなると、この1文字しかないですよね」

 ◇「ジョン王」公演日程(東京公演は他都市の公演と出演者・配役が一部異なる)
 <東京公演>2022年12月26日(月)~2023年1月22日(日)Bunkamuraシアターコクーン
 <愛知公演>2023年1月26日(木)~29日(日)御園座
 <大阪公演>2023年2月3日(金)~12日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
 <埼玉公演>2023年2月17日(金)~24日(金)埼玉会館大ホール

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