藤井王位 20歳の美酒 19日誕生日後初対局飾った 過密日程も3連勝「将棋は体力」体現

[ 2022年7月22日 05:30 ]

王位戦第3局に勝利した藤井聡太王位(日本将棋連盟提供)
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 藤井聡太王位(20)=王将、竜王、叡王、棋聖含めて5冠=が豊島将之九段(32)の挑戦を受ける第63期王位戦7番勝負第3局は21日、神戸市の有馬温泉「中の坊瑞苑」で2日目が指し継がれ、84手で藤井が勝利した。第2局に続く連勝で2勝1敗とリードし、19日に迎えた20歳誕生日を自ら祝った。第4局は8月15、16日に佐賀県嬉野市で指される。

 20代初戦にふさわしい、華麗な決め手があった。藤井が優勢で迎えた80手目。銀なら手駒にある。豊島王を詰ますならあと1歩が欲しい。

 藤井は長く自陣に控えたままだった飛車を稼働させ、豊島のと金を取った。そのと金には、馬などのひもが付いていたため、割に合わない飛車歩交換となったが「一歩千金」とはこのことだ。寄せのレールに乗せて4手後、豊島を投了へ追い込んだ。

 「経験の少ない形になって序盤から難しい展開にしたかと思った」

 戦型は3局連続の角換わり腰掛け銀。銀桂交換の駒得ながら封じ手時点の形勢判断は「手が分からず、苦しいのかなと」。自陣へ馬、成桂、と金に進入されたため、新たな攻め駒を与えないよう歩や桂馬の小駒で攻めをつなぎ、優勢を築いた。

 19日に20歳の誕生日を迎え、その初対局を自ら飾った。20代になって抱いたのは喜びより自覚。「過去の棋士を見ると20代半ばまでに活躍された方が多く、自分にとっても大事」。いわば最年少5冠の達成感より、焦燥感だろうか。96年、当時の全7冠を25歳で独占した羽生善治九段(51)らを念頭に、現状に甘んじない意欲を語った。

 13、14日に札幌市で第2局、17日に名古屋市で永瀬拓矢王座(29)との棋聖戦第4局に続く、「中2日、中2日」のタイトル戦に3連勝。全8冠中、過半数超えの5冠だからこその過密日程を乗り越えた。

 藤井には昨年8月18、19日に王位戦第4局、22日に叡王戦第4局、さらに24、25日に王位戦第5局を指した例があり、「中2日、中1日」の勝敗は○●○だった。

 「東海の若大将」と呼ばれた大師匠・板谷進九段の信条「将棋は体力」を体現した。勝率上は若干先手が有利なことからテニスになぞらえられる将棋。今期先手が勝利し合って迎えた第3局、後手の藤井が今期初のブレークに成功し、一歩抜け出した。

 ≪豊島九段巻き返し誓う≫豊島の気迫が見えた。2日目午前11時前から長考に入り、1時間の昼食休憩を挟んで59手目を指したのは午後2時53分。2日制8時間の記録上は3時間3分だが、うな重膳に箸をのばしながら実質4時間考えた59手目だった。この角成について「勝負できる順がなくて、角を成るしか仕方なかった」。先手番を落としたが、第4局へ向け「しっかり準備して頑張りたい」と4期ぶりの返り咲きへ巻き返しを誓った。

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2022年7月22日のニュース