知床観光船事故 社長の「お客様の要望」発言に専門家が憤り「海を知る人の表現ではない」

[ 2022年4月27日 19:35 ]

東京・六本木のテレビ朝日社屋
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 海難事故に詳しい東海大学海洋学部の山田吉彦教授が27日、テレビ朝日系「スーパーJチャンネル」(月~金曜後4・45)に生出演し、北海道・知床半島沖で起きた乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU1(カズワン)」の遭難事故で、運航会社の社長がこの日、開いた会見での説明にコメントした。

 桂田精一社長はこの日、斜里町内のホテルで会見を開いた。冒頭では2度にわたる土下座などで謝罪の言葉を述べたが、報道陣の質問に困り、しばし無言になる場面も多く見られた。山田氏は「桂田社長がまったく船舶運航に関する知識を持っていないというところがよく分かりました。憤りを感じるくらいです」と怒りを口にした。

 中でも問題視したのは、天気予報の読みだった。桂田社長は事故当日の運航判断について、「その時は波風ともになかったということを調べました。これはテレビである天気予報士の方がそう言って、今回の事故に関してちらっと見まして、調べられるのかと思って調べました」と、気象予報士に頼ったことを明かした。山田氏は「出港して帰港するまでの安全を守るのが船会社の役割。(社長の主張では)『今、大丈夫だから大丈夫だ。しかも天気予報見ても問題ない』と。いや、天気予報はこれから荒れるということを示していた」と疑問を呈した。

 さらに山田氏は、桂田社長が「お客様もこのような(北海道の)先端まで来て、『ちょっとでも走ってほしい』という要望がすごくあります」と説明したことについても、首をかしげた。「本当に顧客のことを考えた場合、海に携わる人間はみんなまず安全を第一に考える。それはお客さんが喜ぶかというよりも、まず安全に送り届け、戻ってもらうことが第一なんです。それがないがしろにされて、いかにもお客様が期待しているからと(説明している)」。その上で、「少しでも荒れてくると、この状況ではすぐ船酔いして心地良くない。お子様もいましたので、決して海のことを知っている方が言う表現ではない。これがサービスだと思っていたら、この運航会社自体が間違いだと思います」と、厳しい言葉を続けた。

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2022年4月27日のニュース