小説紹介クリエーター・けんご 小説家デビュー 10社で争奪戦展開 初版は異例の部数

[ 2022年4月27日 05:00 ]

TikTokでお気に入りの小説を解説するけんご(提供写真)
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 動画投稿アプリ「TikTok」で紹介した小説を次々とヒットさせているインフルエンサーが、小説家デビューする。「小説紹介クリエーター」として活動中のけんご(23)。出版社10社の争奪戦の末、双葉社からあす28日に「ワカレ花」を刊行する。すでに映画化のオファーも寄せられているなど、大型新人のデビュー作に注目が集まっている。

 双葉社によると、初版部数は2万5000部。新人のデビュー作は通常3000部ほどで「話題の新人でも5000部」(出版関係者)とされていることから、異例の人気ぶりがうかがえる。

 けんごは、自身が好きな小説の読みどころを30秒ほどで紹介する動画を2、3日に1回のペースで投稿。2020年11月にTikTokのアカウントを開設し、これまで約300本の動画をアップした。フォロワー数は約28万人。昨年7月、筒井康隆さんの「残像に口紅を」(89年)を取り上げると、昨年末までに11万部を超える重版に。ほかにも「余命10年」(07年)や「レゾンデートルの祈り」(昨年6月)などの小説が売れ、出版界で「日本で一番本を売るTikTokクリエーター」と呼ばれている。

 大学1年の時から小説を読み始め、これまで800~900冊ほどを読破。若い世代に小説の魅力を伝えようと、10代のユーザーが多いTikTokの活用を思いついた。けんごが紹介した小説欲しさに、初めて書店に行ったという10代も増え、影響力は拡大。「自分が書くことで多くの人により小説の魅力を伝えられたら」と自ら小説家になることを決め、昨年10月から執筆を始めた。フォロワーからアイデアを募り、希望の多かった恋愛小説とした。

 出版界全体が今回のデビューを応援しており、TSUTAYAや未来屋書店は購入者特典を付けて販売促進する。双葉社の渡辺拓滋編集局次長は「出版界にTikTok小説という新たなジャンルができ、10代の若い世代が小説に興味を持っていただけたらいいなと思っております」と期待している。

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