球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

華やかに見えるメジャーの格差社会にがく然とする

[ 2016年9月4日 05:30 ]

 9月になってアクティブ・ロースター(ベンチ入り)枠が25人から40人に広がった。少数の有望マイナー選手が腕試しで呼ばれ、1試合につき約30万円支給される。年俸が低いマイナー選手には憧れの狭き門だ。何しろほとんどの選手が年俸100万円以下(1ドル=100円換算)。大リーグよりシーズンが短いせいもあるが、1年目の新人マイナー選手は月給11万円程度。ジャイアンツ傘下の1A選手は22週間のシーズンで75万円。1週間3万4000円、時給850円という。

 データはワシントン・ポスト紙の特集記事「夢を追う貧困選手」からだが、これで衣食住をまかなうのは不可能。選手たちのクレジットカードは借金カードと言っていい。そこでマイナー歴のある弁護士が41人の元マイナー選手を集め大リーグ機構(MLB)と30球団を「連邦政府や州法で定められている最低賃金に関わる法律に違反している」とカリフォルニア州の下級裁判所に訴えた。この種の訴訟はこれまでもあったが、すべて玄関払い。今度は12月の事情聴取にこぎつけた。

 MLBの言い分は「画家や音楽家あるいは他の創造的な活動を行うプロの人たちは公正労働基準法の適用除外になっている。野球選手も彼らと同様に扱うべきで、一般労働者と同じに扱うのは不適切」というのだ。

 大リーグ各球団の年平均利益は23億円、大リーガーの平均年俸が4億4000万円。その金満業界のマイナー選手の時給が飲食物販売員、グラウンド整備員などを含め球場内で働く人の中で最低というのはおかしくないか。記事には試合後の軽食の残りを集めて持ち帰る選手の写真が付いていた。格差社会もここまでくるとがく然とする。
 (野次馬)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る