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【コラム】海外通信員

リーグ再開へ慎重なアルゼンチンサッカー協会

[ 2020年7月10日 08:00 ]

 世界各地で新型コロナウイルスの脅威は続いているが、ほとんどの国が停滞状態から抜け出し、感染を避けながら段階的に日常に戻りつつある。サッカー界もその一例で、欧州各国でリーグ戦が再開し、日本でもJリーグが戻ってきた。

 そしてその流れに沿うかのように、南米諸国(感染が抑えられていない時期から活動を始めた特殊なブラジルのケースを除く)でも次々と試合開催日が定められ、それぞれのサッカー協会が選手及び関係者の安全を最優先しながら作成した感染予防対策ガイドラインに基づいて着々と動いている。

 しかしそんな中アルゼンチンでは、7月初旬現在もサッカー再開の目処は立っていない。パンデミックによる緊急事態宣言が発令された直後に活動が一切停止してから、この原稿を書いている時点で約4ヶ月が過ぎたが、選手たちはひたすら自宅での個人トレーニングに打ち込む日々が続いている。ブエノスアイレス首都圏を中心とした感染拡大が続いていることにより、アルゼンチン政府がリーグ戦再開に関して非常に慎重な姿勢を維持しているからだ。

 3月20日から全土で強制隔離措置がとられているアルゼンチンでは、これまでにいくつかの州で感染を抑制できたとして制限が徐々に緩和されていたことから、一時はAFA(アルゼンチンサッカー協会)でも感染者の少ない州でトレーニングキャンプを行なう案が検討された。

 だがAFAのクラウディオ・タピア会長は、6月中旬に動画によるメッセージを配信して「アルゼンチン全土がフェーズ4に入るまでトレーニングは再開しない」と告知。「フェーズ4」とは感染予防対策における検疫フェーズ1から5までのうち「感染者倍増に要する日数が25日以上」で「人々の移動が75%まで許可」される段階を示している。

 タピア会長はその理由として、チーム及び選手が感染の勢いが衰えないブエノスアイレス首都圏に集中していることを強調。「首都圏にはアルゼンチン国内にある123のプロチームのうち59%が本拠地を置き、3900人の選手のうち現在75%が滞在していることから、大人数が他の州へ移動することで感染を広めるわけにはいかない」という。確かに、国内で都市間の移動そのものが禁じられている中、7月初旬現在で制限の最も厳しいフェーズ1にあるブエノスアイレス首都圏から大勢のサッカー関係者が地方に出向くことは危険であり、非現実的と受け取られて当然だ。

 だからといって、コロナ後のプランが皆無の状態でのんびりしているわけにはいかない。タピア会長のメッセージが配信されたあと、ラジオ番組の取材を受けたリーベルプレートのマルセロ・ガジャルド監督が「いつ、どのような形で再開されるのかもわからないとは滅茶苦茶だ。議論して、せめてアイデアを生み出さなければ」と苦言を呈し、これに触発されたかのようにAFAの幹部が活動再開後のリーグ形式のプランを考案。今のところ、1部リーグの全24チームを6チームずつ4組に分け、グループステージ、準決勝、決勝というフォーマットで短期トーナメントを行なう案が有力と考えられている。全試合をホーム&アウェーで行なうか、準決勝と決勝を1試合決着にするかは活動再開の時期次第となる。

 実際のところ、国際試合についてはFIFAも南米サッカー連盟も9月再開を目論んでいるため、それまでにはアルゼンチンの選手たちもプレー可能なコンディションになければならないことになる。7月に入ってから新たな感染者が確認されたために、12の州で再び制限の厳しいフェーズに戻っていることを考慮した場合、全土でフェーズ4に入るまでトレーニング開始を待っていたら、W杯予選にもコパ・リベルタドーレスにも確実に間に合わないだろう。

 ラプラタ川の対岸にあるウルグアイの首都モンテビデオでは、8月1日のリーグ戦再開に向けて全クラブが6月初旬からトレーニングを行なっている。もちろんその前に関係者全員が検査を行ない、その費用はウルグアイサッカー協会が全額負担した。アルゼンチンでは検査に必要な経費をどうするのかさえ決まっておらず、実費で検査を行なうだけの予算がないクラブも少なくない。

 アルゼンチンにサッカーが戻ってくるのは一体いつなのだろうか。現時点では全くわからない。(藤坂ガルシア千鶴=ブエノスアイレス通信員)

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