【コラム】海外通信員

新型コロナの影響が続くブラジルサッカー界

[ 2020年6月11日 19:30 ]

 6月9日現在、ブラジルは新型コロナ感染者数が71万人を超え、アメリカに次ぐ感染拡大国になった。死亡者は3万7千人を超えた。ただ致死率を見ると5.3と日本と同じ数字である。感染する人も多いし、死亡する人も多いが、助かる人も多い。英国、スペイン、イタリア、フランスの致死率は10%から15%と非常に高い。そう考えると、人口2億人、日本の23倍あるこれだけの大国で、地域や公共か私立かによって、医療格差がある国で、多くの貧困層がいる中、感染が広がる前の3月下旬からの外出自粛の効果はあった。もし、外出自粛を感染が拡大してから始めていたら、もっと大変なことになっていただろう。

 周囲を見回せば、3ヶ月半の間、罰則のない外出自粛令を守っている。ライフラインの仕事、スーパーなど食料品店、ガソリンスタンド、ペットショップなど生活必需のお店以外は全て対面営業を中断し、レストランもテイクアウトかデリバリーのみ。仕事はテレワーク、授業はオンラインと自宅待機を守っているが、もちろんエッセンシャルワォーカーたちは公共交通機関を利用して働いている。政府からは超低所得者のみの経済支援しかないにもかかわらず、皆が協力しあって、食べていくための知恵を出して、この危機を乗り越えようとしている。

 都市、同じ市内でも地域によって感染者数や病床の利用率はかなり異なるため、周囲に感染者がほとんどいない場合もあれば、感染者が多い場合もあるのが現実だ。ただ、国全体で1日の新たな死亡者数が850人とピークが続く様子で普通の生活に戻るのはまだまだ先になりそうだ。それでも、各地で緩和政策の第1段階として商店、ショッピングセンターが時間制限ありの再開が始まった。今後、さらに商業活動が再開していく。

 自費治療、入院受付の私立病院では感染患者が入院しても、よほどの持病がない限りほぼ回復している。サンパウロ州はサンパウロ市内に4000床の仮設病院を建て、軽症患者を受け入れている。ちなみにブラジルには全国民に対して無料の公共保険システムがあり、公立機関の利用ができるようになってる。ただ、中流以上は自費や企業が民間保険に支払いさらに良質の私立病院を利用する。

 サンパウロ州は、多くの感染確認者がいて治療が行われているが、病院は8割の病床使用率で崩壊には至っておらず、入院するものもいれば、回復して退院するものもいる。私立病院に至っては、病床が埋まることはなく、コロナ罹患で入院となってもきちんとした治療を受けられほとんどが回復している。

 問題は貧困地域や医療が不備な田舎だ。広大な国土だけに、まだ感染が広がっている。州政府単位で、医療従事者を中心にPCR検査の促進をしており、私立病院では自費でPCR検査がすぐ受けられる。感染確認者数はまだ増えるだろう。しかし、検査は感染の事実を確認するために重要なことで、この先も感染者数が増えることは間違いない。

 一方、抗体検査も進めており、都会では有料で病院、ドライブスルー、自宅出張でもすぐにやれるようになっている。無症状ですでに抗体を持っている人の数も確認が増えているところだ。サンパウロ州は外出時にはマスク着用が義務化され、マスクなしで歩いている人はほぼ見ない。ボルソナーロ大統領が新型コロナを『軽い風邪』と言ったというニュースが世界を回ったが、州政府や国民はそのような意識を持っておらず、真面目にコロナ対策をしている。大統領は無知な発言や暴力的な言葉を使う人だが、支持率は下がり、7割以上の国民が大統領を批判している。

 さて、パーティー大好きの国民だが、シュラスコ(ブラジル風バーベキュー)もお預け、そして、当然、人々の熱狂するサッカーもお休み状態だ。

 イタリアで感染が拡大して、欧州のサッカーゲームが中断になったのが3月初旬のことだった。ブラジルは感染が拡大する前に、サッカーの大会は全て中断した。当時、各州リーグの真っ最中だった。本来ならば州リーグが5月に終わり、全国リーグが始まっているはずだった。州リーグと全国リーグは主催が州サッカー協会とブラジルサッカー連盟と異なるため、再開の場合、ただ単に州リーグを始めればいいというわけではなく、調整が必要だ。

 州リーグは、全国リーグ1部のエリートクラブだけでなく、中小クラブも戦う。中小クラブにとって大会に参戦すること、エリートクラブとの試合は貴重な収入源になるもので元々経営が厳しいクラブにとって、この中断は命取りになりかねない。なんとか、2020年度州リーグを再開し終わらせることが叫ばれている。6月13日からリオデジャネイロ州政府は、無観客および衛生管理の徹底を条件に試合を許可し始めた。その後、7月からは、スタジアムの観客入場制限を3分の1のみとすることになる。しかし、リオ州は感染がまだ拡大している状況の中、PCR検査をしたところ多くの選手が感染していたことが判明したクラブもあり、性急な大会再開を心配する声もある。

 コンメボル(南米サッカー連盟)は、11月に決勝を予定していた2020リベルタドーレス杯は年を越して2021年1月になるの可能性が高いと。また、カタールW杯南米予選は本当ならば3月に始まるはずだったが、今のところ9月に延期されることになっている。

 経済的打撃を受けているクラブの状況は深刻だ。そのため、CBF(ブラジルサッカー連盟)は、クラブの救済措置として、テレビ放映権料を前貸しする形で1部リーグに約25億円、2部リーグに約4億円の無利子資金を用意することにした。

 また、このコロナ禍において、ブラジルは2023年女子W杯招致への立候補を政府の財政保証が得られないなどの理由で断念することになった。日本、ニュージーランド&オーストラリア共催、コロンビアが立候補しているが、南米初開催を目指すコロンビアを南米サッカー連盟として一丸として支持することで合意した。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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