【コラム】海外通信員

コパ・アメリカ ブラジル開催決定までのドタバタ劇

[ 2021年6月5日 09:00 ]

アルゼンチン代表MFリオネル・メッシ(バルセロナ)
Photo By AP

 来たる6月13日、コパ・アメリカがブラジルで開幕する。UEFA EURO 2020同様、本来なら昨年開催されるはずだったものが新型コロナ禍の影響で今年に延期となった大会だ。

 だがEUROとは異なり、南米の場合は1年後の開催を実現させるまでに信じがたいほどのドタバタ劇があった。最終的にブラジルに決まるまでの間は実に多くの情報が飛び交い、我々メディアもかなり振り回されてしまった。

 当初の予定ではコロンビアとアルゼンチンの共催となっていたが、反政府デモの激化から政情不安が深刻化していたこと、新型コロナ感染拡大が続いていたことを理由に、コロンビア政府が南米サッカー連盟に「開催の延期」を申請。コロナ禍で遅れているW杯予選、また南米各国の代表選手の大半が活動の拠点とする欧州のサッカーカレンダーを考慮した場合、これ以上の延期が不可能なことは誰の目にも明らかだったため、いくら同国の大統領が延期要請の姿勢を必死にアピールしていたとはいえ、「事実上開催を返上した」と受け止めていいだろう。

 こうして南米サッカー連盟がコロンビア開催中止を発表したのが5月20日。その後各国のメディアは、南米サッカー連盟がアルゼンチンの単独開催か、コロンビアに代わる他の共催国を選ぶかのいずれかを前提に準備を進めていると報じた。

 アルゼンチンとの共催候補にはチリが挙げられた他、今年2月に予定されていたU17南米選手権(パンデミックのため中止)のホスト国だったエクアドル、ベネズエラも名乗りを上げた。

 その中で共催の最有力候補と考えられたのはチリ。南米サッカー連盟のゴンサロ・ベジョーソ事務局長によると、最も決定的とされた理由は「一部の試合で観客の入場が可能であること」だったが、一方でアルゼンチン単独開催を実現するための準備も同時に進行していた。

 にもかかわらず5月30日、なんとアルゼンチンでの開催も中止が決定してしまう。

 コロナ感染拡大の勢いがおさまらず、5月22日から全土で9日間の短期集中型ロックダウンに入っていたアルゼンチンでは、政府が南米サッカー連盟に対し、コパ・アメリカ開催を実現する条件として感染防止のための厳格なプロトコルを提示。その厳しさはサンティアゴ・カフィエロ内閣官房長官曰く「南米サッカー連盟の役員がそれを見て驚いた」ほどだったが、5月27日には1日の新規感染者数で過去最高となる4万1000人を記録した国としては当然の要求だったと言えるだろう。アルゼンチンの有力紙ラ・ナシオンのアレハンドロ・カサル記者は、政府が「あらゆる経済活動に厳しい規制を敷きながらサッカーの国際大会を開催することの矛盾が政治的に不利な状況を招くと判断した」と指摘している。

 残されたのはチリとエクアドルのみと考えられていた時、意外なところから具体的なオファーが舞い込んだ。2016年にコパ・アメリカ・センテナリオ(100周年記念大会)が開催されたアメリカだ。

 5年前にセンテナリオが大盛況に終わったことは記憶に新しいが、今回も有観客試合で大会を盛り上げることが可能となる他、大会に参加するチームの関係者全員にコロナワクチンを接種するというおまけつき。企画を提案したのはMLSで、そのオファーは興行的に非常に魅力的だったため、アメリカ開催が最も有益な解決案だと論じるメディアも少なくなかった。

 これらのオプションを抱え、南米サッカー連盟が各国の代表者と緊急会議を開いたのが大会開幕を2週間後に控えた5月31日。会議ではまず「コパ・アメリカは南米大陸内で行なうこと」で意見が一致し、アメリカからのオファーは真っ先に却下されたものの、チリはセバスティアン・ピニェーラ大統領があくまでも「共催であれば協力したい」とのスタンスを明確に示していた他、エクアドルにはロジスティック面での問題があり、消去法で決めるしかない苦しい状況に。そこで会議の途中、CBF(ブラジルサッカー連盟)の代表者がブラジル大統領府とコンタクトを取ったところ、「コロナは風邪」発言で世界的に有名になったジャイール・ボルソナロ大統領が即刻承諾。南米各国の代表者から「12日間で大会に必要な全てを準備できる唯一の国」と絶賛され、南米サッカー連盟のツイッターアカウントでブラジル開催決定が発表された。

 この直後、ブラジル国内ではボルソナロの政策に不満を抱く党派が猛反対し、政府が「まだ確定したわけではない」と声明を出す一幕もあったが結局変更はなく、日本代表も出場した2019年大会に続き、2大会連続してブラジルがコパ・アメリカのホスト国を勤めることとなった。

 昨年延期となった理由も、開催権返上の理由もコロナ禍なのに、感染状況が酷くなっている今年、コロナによる死者増加幅が世界で3番目に大きいブラジルで開催される不思議。パンデミック下のコパ・アメリカが何事もなく、無事に終わることを祈るしかない。(藤坂ガルシア千鶴=ブエノスアイレス通信員)

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