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【コラム】海外通信員

『カテナチオ』の国で 攻撃への指向を強めパスワークを重んじるサッカー

[ 2020年12月5日 11:00 ]

イタリア代表DFアレッサンドロ・バストーニ(インテル・ミラノ)
Photo By スポニチ

 UEFAネーションズリーグ・グループAで首位になり、ファイナル4への進出を決めたイタリア。2017に行われたロシアW杯欧州予選のプレーオフ・スウェーデン戦に敗れて地に落ちたアズーリにとって、久々に挙げた好成績だった。その重要な試合となった11月15日のポーランド戦、そして18日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦において、イタリアは21歳のセンターバックを起用して連勝したのである。ジョルジョ・キエッリーニやレオナルド・ボヌッチといったベテラン不在の中、その穴を埋めて有り余る活躍を見せたのはインテル・ミラノのアレッサンドロ・バストーニだった。

 代表デビューは11日のエストニア戦。そこで信頼を得た彼はポーランド戦にも先発起用をされ、そのままスタメンとして定着。読みの良さを活かしたインターセプトと、左足を使った正確なパスの組み立てで、チームに安定感をもたらした。新型コロナウィルス感染のために自宅に待機していたロベルト・マンチーニ監督は「彼はまだまだ良くなれる。キエッリーニのような存在に成長することだって可能だ」と目を細めた。実は、インテルでは3バックとして不動のスタメンであり、チャンピオンズリーグにも出場するなどトップレベルでの経験値を急速に高めている。「代表に来ることができたのは、(アントニオ・)コンテ監督のおかげ」と、所属チームで出場チャンスを与えてくれた監督に感謝した。

 ベテランが重宝される傾向のあったセリエAでは、長年代表で主力を勤めていたボヌッチやキエッリーニの後継者不足が懸念されていた。ミッドフィルダーなどには才能が育つ一方、DF陣は人材難と言われている中で待望のニューカマー出現であった。ところがセリエA全体を見回せば、台頭を始めている若手イタリア人センターバックはバストーニだけではない。

 ローマの24歳、ジャンルカ・マンチーニはバストーニよりも先に代表招集経験を積んでいた一人。ハードマークだけでなく右足のキックにも自信があり、緊急時であれば右のサイドバックもこなす。A代表にはまだデビューしていないが、ミランではU-21代表のキャプテンであるマッティア・ガッビアがスタメン争いに参入できる人材としてチーム内での評価を上げている。そしてもう1人の注目株は、エラス・ベローナに所属する20歳のマッテオ・ロバト。開幕のローマ戦で途中出場するや、アグレッシブな守備を披露。以来スタメンをガッチリと確保している。

 彼らに共通しているのは、足元のうまさ。イタリアではサッカー協会が音頭を取り、攻撃への指向を強めパスワークを重んじるサッカーを育成段階から磨き上げるようにしてきた。センターバックと言えどもただ守備が堅いだけでは不十分で、今はプレスを避けるためのボールコントロールや後ろからのパス出しが上手くないと通用しないと言われている。セリエAのクラブでも攻撃重視の戦い方をするクラブが増えた結果、順応する若手が台頭しやすくなったということなのだろう。

 ただしこの国は、『カテナチオ』に代表される守備の文化がある国。「本来センターバックはマンマークにこそ強くなればいけないが、育成段階からラインディフェンスばかりやらされてきた最近の若手には脆い面がある」という評価もサッカー指導者からは出ている。そのような評価軸もと、果たして次世代のイタリア人センターバックたちはどのような進化を遂げるのか楽しみである。(神尾光臣=イタリア通信員)

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