【コラム】海外通信員

泣いたマルセイユがもう笑った(上) 前指揮官への復讐? リヨン戦勝利がターニングポイント

[ 2019年12月6日 14:30 ]

 「泣いた烏がもう笑った」の諺(ことわざ)を思い出すほど、昨シーズン泣きに泣いたマルセイユ(OM)に笑顔が戻っている。(結城麻里=パリ通信員)

 3日(第16節)には、2位争いをしていたアンジェに敵地で完勝(0-2)、酒井宏樹もエリアに突撃してPKをゲットし、得点源になった。この勝利でOMは、首位パリSG(PSG)に次ぐ2位の座を固め、連勝記録も5に伸ばした。

 ほんの1カ月余前には、フランス版クラシコで宿敵PSG(第11節10月27日)に惨敗し(4-0)、アンドレ・ヴィアス・ボアス監督のクラシコ管理と戦術に疑問が出ていたもの。酒井もディ・マリアとエムバペに翻弄され、「試合にならなかった」と溜息を漏らしていた。

 ところがその後OMは、怒涛の5連勝で2位に浮上。数日後のボルドー戦にも勝てば、3位候補に6~8ポイントの勝ち点差をつけることになる。いったいOMに何が起きたのだろうか?

 直接のきっかけはディミトリー・パイエットの大復讐劇だった。

 PSGに惨敗した後、OMはリヨンをオランジュ・ヴェロドロームに迎え撃った(第13節11月10日)のだが、そのリヨンを急きょ率いていたのが、昨シーズンのOM監督リュディ・ガルシア。W杯後の代表選手把握ができず、みずから仕切った選手獲得にも失敗、チームがバラバラになり、クラブも財政難に陥って、OMサポーターから毛嫌いされていた人物だ。パイエットもベンチ扱いに不満を溜めていた。それがリヨンのシルヴィーニョ監督解任(10月7日)で、あっという間に宿敵リヨンの監督に鞍替えしたのだった(10月14日)。

 そこでリヨン戦前日、パイエットが報道陣を前に思い切った復讐に出た。ガルシア監督の名は一度も出さなかったが、「試合前のミーティングでリヨンの選手や指導者らをけちょんけちょんに言っていた人が、間を置かずにリヨンに行くなんて、奇妙な感覚だね。僕たちのことをああいう風に言っていないことを祈るよ」と皮肉たっぷりに宣戦布告したのだ。

 これでフランスは大騒ぎになった。当のガルシア監督は「マルセイユ対リヨン戦であって、ガルシア対パイエット戦ではない」と必死にかわしたが、「OMサポーターも復讐劇に加わるのでは?」の危惧が拡大。しかも、言葉をピッチで証明しなければならなくなったパイエット自身にも、大きなプレッシャーがかかった。もし敗北すれば発言の責任を問われるからだ。

 だがパイエットは責任をとった。決死の形相で走り回り、2ゴールを叩き込んでOM勝利をもたらしたのだ(2-1)。まるでEURO2016のパイエットが復活したかのようだった。サポーターも素晴らしかった。クラブ創立120周年を祝う芸術的スタンドパフォーマンスと熱狂で、フランス随一の応援ぶりを展開、リヨンを圧倒したのである。

 このときOMに何かが生まれた。パイエットはその後も絶好調を維持しており、チームにも連帯感が溢れている。

 だがOM復活の最大功労者は、やはりアンドレ・ヴィアス・ボアス監督だろう。(続く)

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