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【コラム】海外通信員

レアル 冬の移籍市場での動きは!? ジダンの希望はポグバ

[ 2019年10月18日 06:00 ]

レアル・マドリードのジダン監督はポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)の獲得を希望している!?
Photo By AP

 冬の移籍市場が近づくに連れて、レアル・マドリードを主要に扱うスポーツ新聞が補強に関する話題を頻繁に報じるようになった。

 取り扱われているのは、中盤の補強に関して。今夏の移籍市場で指揮官のジネディーヌ・ジダンは、マンチェスター・ユナイテッドが売却する意思のなかったポール・ポグバに執着し、レアルがあと一押しで獲得できるところまでこぎ着けていた代わりの選手(トッテナムMFクリスティアン・エリクセン、アヤックスMFファン・デ・ベーク)の獲得を拒否し続けた。

 その結果、レアルの中盤はバイエルン・ミュンヘンにレンタルしていたハメス・ロドリゲスが出戻ったのみで、反対にマテオ・コバチッチ(チェルシーに完全移籍)、ダニ・セバジョス(アーセナルにレンタル移籍)、マルコス・ジョレンテ(アトレティコ・マドリード移籍)が出て行くなど、選手層は薄くなった。ここに来てフェデ・バルベルデにブレイクの予感が漂っているのはポジティブだが、カセミロの純粋な控えやルカ・モドリッチ、トニ・クロースのように攻撃を形づくれる選手は足りていない印象だ(ハメス、イスコ、ブライム・ディアスはもっとアタッカー寄りだ)。

 こうした状況において、レアル贔屓(ひいき)とされるスペインのスポーツ紙『マルカ』や『アス』は、レアルのエリクセン獲得の可能性をほぼ同時に報じ始めた。曰く、レアル首脳陣がエリクセンの獲得の必要性を感じているとのことだ。ただし、どちらの新聞においても、それはあくまでクラブ首脳陣の考えであり、ジダンが獲得を了承するかはまた別の話であるという。

 ある『アス』の記者にこうした報道の仕方の理由を聞いてみると、そこにはレアル首脳陣の意図が見え隠れする。レアル首脳陣とジダンは良好な関係を保ちつつも、選手補強の考え方においてはすれ違いが発生している模様。元世界最高の選手ながら横柄なところはなく、温厚で謙虚な人物として知られるジダンではあるが、やはりその内には強い信念を秘めており(そうでなかったら、現役最後の試合となるワールドカップ決勝で頭突きなどしないだろう)、そのためクラブがいかなる補強の方針を立てても自分が求める選手以外は一切受け付ける考えがないようだ。

 ジダンは「ほかとは差をつける選手」と称した同胞のポグバが獲得できないならば、今季中に現陣容をいじることがマイナスになると考えている様子。レアルは中盤の選手層こそ薄いが、トップチーム所属は26選手とアタッカーを中心に飽和状態となっており、エリクセンなど新たに中盤の選手が加われば、イスコらをスタンド送りにしなければならないなど新たな問題も生じてくる。そのため今季中は現陣容でやり繰りしていくことを決心し、頑なな姿勢を貫いているとのことだ。その一方で、レアル首脳陣は獲得寸前までこぎ着けたエリクセンを引き入れるべく、『マルカ』や『アス』の報道から世論を味方につけて、間接的にジダンの説得を試みているという。

 思い出すのは、ジダンがチャンピオンズリーグ三連覇を達成したシーズンの冬の移籍市場だ。レアル首脳陣は当時アスレティック・ビルバオに在籍していた現チェルシーGKケパ・アリサバラガの個人合意に至っていたものの、ジダンはケイロール・ナバス(今夏にパリ・サンジェルマンへ移籍)への信頼を強調し、チームの和を保つために獲得に断固反対して、結局移籍は流れた。ジダンは相変わらず、その信念を曲げようとはしない。

 レアル監督はこれまで、クラブ首脳陣の補強方針に振り回される運命にあったが(ホセ・アントニオ・カマーチョならば、それに納得がいかず2度にわたって就任直後に辞任している)、ジダンは彼らと張り合うことができ、意見が対立しても追い出されることもない。これまでの歴史から考えれば、現在のような状況は極めて希と言えるだろう。いずれにしても、レアルのアイデンティティーは「勝つこと」にほかならなず、それこそがジダンと首脳陣が共通して持つ認識だ。冬の市場で実際に起こることは現時点では分からないが、今季が終わるときには、結果だけが物を言うことになる。(江間慎一郎=マドリード通信員)

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