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【コラム】海外通信員

12戦負けなしカリアリ旋風 ナインゴランら補強成功 マネージメントが機能

[ 2019年12月5日 18:30 ]

チームをけん引するカリアイのMFナインゴラン
Photo By スポニチ

 セリエAにカリアリ旋風が吹き荒れている。第14節を終了し、勝ち点28でローマと並んで4位の成績だ。しかも、ただ上位にいるというわけではない。開幕戦で2連敗した後は12戦で負けなしの堂々の成績である。アウェーでパルマを破ったことを皮切りに3連勝、そのうち一つはナポリ相手に勝った試合もあった。今シーズンは欧州チャンピオンズリーグに出場しているアタランタからもアウェー戦で勝利を持って帰り、フランク・リベリを擁するフィオレンティーナにはなんと5ー2で勝利している。特に14節のサンプドリア戦は劇的で、一時期1-3とリードされた展開から猛攻を仕掛け、最後は4-3で勝利した。

 毎シーズンのように残留を争うクラブが強くなったのには、様々な理由がある。まずは選手層を見てみると、残留争いで止まっているレベルではないことが明らかな陣容になっている。レンタルでの補強が多いがこれがとても豪華なのだ。GKには、ロシアW杯でも活躍したスウェーデン代表のロビン・オルセンをローマからレンタルし、FWにはジョバンニ・シメオネを借りてくることに成功した。中盤にはナポリからマルコ・ログを、何よりインテルからラジャ・ナインゴランを連れてきている。ナインゴランはかつてカリアリでステップアップを果たしており、心機一転を図るため古巣に戻ってきたのだ。

 それらが全て噛み合ってのこの成績である。オルセンは常に好セーブを見せる。フィオレンティーナでスランプに陥っていた感のあったシメオネも点を取り出した。ログも中盤で安定してプレーしているし、ナインゴラン は故障明けからコンディションを取り戻すと一人で試合を左右する活躍を見せている。これに加え、ゲームメイクに定評のあるベテランのルカ・チガリーニや、カリアリでは5シーズン目となる主将のジョアン・ペドロらの残留組が噛み合い、バランスの取れた非常に強いチームとなっている。

 ただ、選手を並べているだけではチームにはならない。マネージメントがしっかりしていなければ機能はしないのだ。カリアリの強さは、クラブ経営陣が仕事をしていることにある。若いトンマーゾ・ジュリーニ会長は「若手を中心に攻撃的なサッカーを展開しなければ戦い抜いていけない」という経営方針を立てている。多少チームが不安定に陥ることもあったが、育成部門の充実に定評のあったエンポリでスカウト陣のチーフを務めていた人物を強化部長に引き抜いてチームがまとまった。生え抜きの選手もきちんと育て、若手の筆頭といわれたMFニコロ・バレッラをイタリア代表へ招集させるまでに開花かせた。そして昨夏には彼をインテルへ高額で売却し、その収入を上手く使ってチームをさらに強化している。

 監督も、育成に定評のある人物に任せている。56歳のロランド・マラン監督はセリエA参戦は49歳と比較的遅咲きながら、戦力の限られたカターニアやキエーボで安定した成績を遂げてきた。相手をよく研究してショートカウンターで攻略していく戦術もさることながら、心理面を掌握した巧みなマネージメントで選手を従わせる。シーズンを通して大崩れしないと評判なだけに、前半戦でこれだけのマージンを築くと後半戦も期待できるようなものである。

 カリアリは現在、新スタジアムの建設も計画中。現在使用している仮スタジアム『サルデーニャ・アレーナ』の横に、専用の新サッカースタジアムを2020年秋から2年間の計画で建設するというのだ。クラブの収益をアップできる専用スタジアムまで加わるとなると、このクラブの将来はより輝かしいことになるだろう。アタランタやサッスオーロ、そして冨安健洋の所属するボローニャなどにも言えることだが、中小といえど経営を刷新しているクラブがセリエAの明日を担う存在になるのかもしれない。(神尾光臣=イタリア通信員)

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